ここは執務室だ。この場所には真生が居て専用の椅子に座っている。
 その真向かいにはライゼア、ダランカル、ナシェル、アクスファハンが椅子に腰かけていた。その間には長方形のテーブルがある。

 あれから真生は四人に連絡をし話し合うために執務室に来ていたのだ。

 真生は真剣な顔で四人を見据えながら、オルクの部屋で何があったのかを話した。

 「……――オルクを殺したヤツの正体は不明。だが他の魔種族国家の者だ」
 「なぜ、そのことが分かったのですう?」

 そうライゼアに問われ真生は説明する。

 「なるほど、そうなるってえと。じゃあ他国でも魔王が現れたってことか」
 「ああ、そういう事だ」
 「他国の者を容易く侵入させてしまうとは……」

 そうアクスファハンが言うと真生は少し考えたあと口を開いた。

 「ああ、そうだな。他国の魔王と思わしきヤツは昔よりも警備が緩いって言っていた」
 「まあ、そうだろうな。前魔王さまが亡くなられてから、この国を統括す者は不在だったんだ」
 「このままではまずいのじゃ」

 それを聞き真生は頷きテーブルの一点を無作為にみる。

 「そうだな。でも不在だったからって……それは違う気もするんだが。魔王不在だったなら、それに匹敵する存在を早急に選ぶのが普通じゃないのか?」
 「そう簡単にはいかないのですよ。多種多様な魔種族を統括できる者など……いえ、それだけではありません。誰よりも力を持つ者でなくてはいけないのですから」
 「アクスファハンの言う通りだ。それに魔王になろうって者は野心ばかり先行するヤツが多いからな」

 それを聞くも真生は納得がいかないようだ。

 「野心があるのはいいと思うんだが。そのぐらいじゃないと魔王なんてやってられないんじゃないのか」
 「そうだとしても、それだけでは皆を纏めることなんて難しいでしょう」
 「それを言うなら俺だって、みんなを纏め上げるほどの力なんてないぞ」

 確かに現時点での真生には全てを纏め上げるほどの力なんてないだろう。
 そのことはライゼア、ダランカル、ナシェル、アクスファハンの四人も分かっていた。
 そうであっても内に潜む何かを感じ取っていたため真生なら大丈夫だと思っていたのである。

 「そうでしょうか? 皆を纏めるも今は他にやるべきことがあるために、そのことを行えず……御自身でもできるかを分からないだけかと」
 「オレもそう思うぞ。それに今日、ルウクシェスとスカリグの所に行ったが……魔王さまの印象を悪く言ってなかった」
 「やはり、そうですよねえ。マオウ様の姿をみて悪くいう人など居る訳がありませんわ」

 自分のことのように喜びライゼアは顔を赤らめ体をくねらせながら目をハートにして真生をみつめた。
 それをみた真生はライゼアから視線を逸らし顔を赤らめる。

 「そうなのじゃ! 今からでも警備を強化すれば良いと思うのじゃが」
 「誰をどう配置するつもりだ? まだ俺は、お前たち以外を把握していないぞ」
 「そうか……そうだな。オレなら使えそうなヤツを、ある程度見繕ってこれるが。その中から魔王さまが選び配置させればいいと思うぜ」

 そう言われるも真生は、それだけじゃ足りないような気がしていた。

 「んー……それだけじゃ駄目だろうな。ここまで本を読んで分かってることだけだが……各々役職をもっていない」

 それを聞き四人共に首を傾げる。

 「役職ってなんですう?」
 「肩書のような物だ」
 「四魔帝や魔王とか勇者みたいなものか?」

 少し考えたあと真生は首を横に振った。

 「それは称号だよな?……ん? ちょっと待て……四魔帝は肩書の内か。でも、それってなんだ?」
 「前魔王さまが決めて傍に置いた最強と云える者たちのこと」
 「まあオレも、その一人だったがな」

 そう言ったあとダランカルは、なぜか照れている。

 「そうだな…………そうするか」

 何かを思いついたらしく真生は、ニヤリと笑みを浮かべていた。