あれから真生はライゼアとナシェルとアクスファハンと共にオルクの部屋へ来ていた。

 部屋の中では現在、難しい顔で真生がオルクの生死を確認している。
 その様子をダランカル、ライゼア、ナシェル、アクスファハンがみていた。
 未だにトールシギは魂が抜けたようになっていて身を震わしている。

 真生はオルクの生死を確認したあと首を横に振った。

 (既に死んでいる。腹を一撃で……って、それも……刃物とかじゃない。手だけで死に至るほどの攻撃ってできるものなのか?
 いや……できたとしてもトールシギに付着している血痕の量。それに手だけって云うのも変だ。普通なら手以外にも血が付いているはず)

 考えても分からず真生は困惑している。

 「何か分かったのですう?」
 「いや、どうも分からない」
 「殺したのは、トールシギじゃないのですか? 動機は十分にあるように思いますが」

 そうアクスファハンに言われ真生は首を横に振った。

 「パッと見だと、そう思うかもな」
 「そうだな……確かに魔王さまの言うように、オレもトールシギが犯人じゃねえように思う」
 「なぜそう思うのじゃ?」

 どうしても理解できずナシェルはそう問いかける。

 「先ず……手で攻撃したなら、それ以外にも血が付いているはずだ。他の方法だったとしても同じだろう」

 そう言いながらトールシギへ視線を向けた。

 「それにトールシギがやったなら何時までも、こんな所に居ないし放心状態になんてなっていない」
 「言われてみれば確かに、その通りですう」
 「ですが……そうだとして誰が、どのようにしてオルクを殺害したのでしょうか?」

 そう問われ真生は天井をみつめ思考を巡らせる。

 「…………俺はこの世界……いや、この国のことを知らない。ましてや、この城に誰が居るのかも把握していないからな」

 そう言いながら真生は無作為に一点をみつめ思考を巡らせていた。

 「それに、オルクを殺害した犯人が……どんな方法を使ったのかも分からない」

 そう真生は言うとオルクへ視線を向ける。

 「遠距離だったのか? 近距離だったのか? 遠隔操作での攻撃だったのか? どうなのか……犯人を突き止めるのは困難だ」
 「魔王さま……それじゃ、どうするんだ? 有耶無耶にもできるが……」
 「そのつもりはない。只この件は長期戦になるだろうな。それに、これが魔王の座を狙ってのことなら……俺を狙って向こうから顔を出すはずだ」

 それを聞きダランカル、ライゼア、ナシェル、アクスファハンは頷いた。

 「それではトールシギのことを、どうなされるのでしょう?」

 そうアクスファハンに言われ真生は考えたあとダランカルの方へ視線を向ける。

 「ダランカル……暫くトールシギを、お前の部屋に置き監視してくれ」
 「それは構わねえが、このことを……みんなに伝えるのか?」
 「いや、このことは口外するな。それと、ここには監視用の魔道具を設置してくれ。あとは……オルクの遺体をどうするかだ」

 そう思い真生は、どうしたらいいのかと悩んだ。

 「ウチの能力で消して運ぶといいのじゃ」
 「あー!! その方法があったな。それで何処に運ぶ?」
 「墓地でしょうか? それか凍らせて何処かに保管するかになりますが」

 そうアクスファハンは言いオルクをみたあと真生の方へ顔を向ける。

 「墓地に入れるのが普通だろう。だが……なるべく悟られたくない。そうなると冷凍保存しかないか」
 「そうだな……それしか方法はねえでしょう。それで何処に保管しやしょう?」
 「そうだな……アクスファハンの部屋は俺の寝室の隣だ。監視するのにも好都合ってことで頼めるか?」

 それを聞きアクスファハンは嬉しいのか涙を浮かべ喜んでいた。

 「ああー……この私に、これほどの重要な任を与えて頂き光栄であります」

 その後、ダランカルはトールシギを抱えオルクをアクスファハンが担いだ。
 それを確認するとナシェルは、トールシギとオルクに能力を順に使った。
 するとトールシギとオルクの姿が消える。
 それを視認したダランカルは真生に一礼をしたあと自分の部屋に向かった。
 そのあとを追うようにアクスファハンは真生に一礼した後、自室へと向かい部屋をあとにする。

 「ナシェル、ダランカルの方が済んだらアクスファハンの部屋へ向かってくれ。それとライゼアは、アクスファハンの監視を頼む。俺は……もう少し、ここを調べる」
 「分かったのじゃ」

 そう言いナシェルはダランカルを追いかけ部屋からでる。

 「アクスファハンが怪しいのですう?」
 「いや、それはない。だが用心のためだ。それに、アクスファハンも狙われる可能性がないとも云えないからな」

 それを聞きアイゼアは頷きアクスファハンを追った。
 それを確認すると真生は部屋の中を歩き回る。そして何か見落としがないかと考えていたのだった。