ここはアンデット系の魔族が住んでいる領地だ。周囲は異様に暗く、ジメジメしている。そのため、この領地の雰囲気が良いとは言えない。

 その領地に入りダランカルは顔色を変えず目的地へと向かい歩いていた。
 歩みを進めるごとに陰気な雰囲気が漂い、それらは段々と増してくる。それでもダランカルは歩みを進めた。
 所々に墓がみえる。それらはアンデット達の住まいなのだろう。刺激を与えなければ襲ってこないためダランカルは無視して先へと進んだ。
 歩みを進めていくと、この領地とは似つかわしくないような建物がみえてくる。
 そう何処かの貴族の屋敷のように立派な建物が目立ちたっていた。

 (相変わらず似合わねえ建物だ)

 鉄の柵に囲まれる建物までくると嫌そうな顔をする。
 そう中に入りたくないからだ。
 それでも話をしないとと思い鉄柵の門に付いている魔法陣へ軽く手で触れた。
 すると待っていたかのように開いていく。
 その音は「ゴ、ゴ、ゴ、ゴオォォオオオー……」な感じで誰かが声を出しているようである。

 (この奇妙なのやめてくれねえかな)

 溜息をつき屋敷の中へと向かい歩き出した。

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 建物の入口までダランカルはくる。すると、この屋敷の使用人なのか地面から緑のボロボロな服を纏った老婆風のゾンビが現れた。
 その老婆風のゾンビは「こちらへ」と言い扉を開けダランカルを誘導し中へと入り進んだ。そのあとをダランカルはついていく。
 至る所に血痕が散乱し立派な黒いジュウタンも勿体無いほどである。
 そのジュウタンを辿るように奥へと進んでいった。

 (どうにかならねえのか? 悪臭が酷すぎる)

 そう思うも耐えながらダランカルは老婆風のゾンビのあとをついていく。

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 奥へ奥へと進むと至る所にドクロや骨などが埋まった壁や扉のある所までくる。

 (悪趣味だ(汗)……)

 そうダランカルが思っていると扉が開いた。
 それに気づきダランカルは部屋の中に入る。
 老婆風のゾンビはダランカルが中に入ったのを確認すると床に沈み消えた。

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 中に入りダランカルは玉座に腰かける骨……いや、もとい……リッチの前までくると会釈をする。

 このリッチはスカリグ・アーナダル、一応女性だ。アンデット内では女王なのだ。まあ女王なら魔王の座を狙ってもおかしくはないだろう。
 至る所に宝石の装飾が眩しいほど施されているドレスやティアラを付けていた。それら全て宝の持ち腐れのようにもみえる。
 因みにブロンドの綺麗な髪の毛はあるのだが勿体ないようだ。

 「お久しぶりです」
 「面と向かっては久しいのう」
 「ってことは、この前の魔王さまの」

 全て言う前にスカリグは話し始めた。

 「魔王さまが復活されたと聞き挨拶に向かうのは当然のことじゃ。だが……アクスファハンのせいもありできなんだがな」
 「そうでしたか。来ていたとは気づかず申し訳ありません」

 そういえば何時ものダランカルの口調とは違う気がするが。そうダランカルは怒らせないように気を付けていたからだ。
 それに一応はアンデット内では女王という地位なため下手に出ているのである。

 「それは良い。それよりも魔王さまから何か言伝があるのではないのか?」

 なぜかスカリグの声が、ウキウキしているようだ。

 そう問われダランカルは口を開き真生の言葉を伝える。

 「なんと妾に逢いたいとな。これは、お洒落をしなければならぬ。ああ……どれを着ていこうかしら」

 何かを察しダランカルの顔は青ざめた。

 (魔王さま……モテるのはいいが、まさか…………なぁ……)

 何もなければと思いダランカルは頭を抱える。
 その後ダランカルは逢う日時を伝えた。

 「分かりましたわ。明後日ですわね。どんなお話かしら……楽しみぃ」

 余程スカリグは嬉しいらしく口調が変っている。
 その様子をみてダランカルは身の毛がよだち、ここから早く退きたかった。だがスカリグに真生のことを根掘り葉掘り聞かれ中々退室できないでいる。
 その後、暫くして話を終えたダランカルは屋敷をあとにするも気力を失っていた。