ここはダークエルフの住まう領地。
 周囲には木々が沢山生い茂っている。大小様々な岩も若干多いようだ。
 それに白や黒い木の色も混ざっている。

 そんな木々の合間の道を歩きながらダランカルは至る所から刺さるような視線を浴びていた。

 (……オレは歓迎されていねえようだ。戦闘にならねえようにしねえと。それに、なるべくは争うなって魔王さまに釘をさされたからな)

 そう思い周囲の視線を感じるもダランカルは気づいていないフリをし先へと進んだ。
 先に進むと岩などでつくられた大きな建物がみえてくる。
 因みに族長の家ではないと言っておこう。
 その建物は石で作られた柵で囲まれていた。
 門の前までくるとダランカルは歩みをとめる。

 (前よりも頑丈なつくりだ。まあ……何十年と来てねえから変わっててもおかしくねえか。それにしても、まさか……アイツが魔王の座を狙ってたとは思わなかった)

 そう思いながら門の右脇の石柱に描かれている魔法陣に触れようとした。

 「何しにきた……ダランカル!!」

 背後から聞き覚えのある声がしてダランカルは咄嗟に右へとんだ。
 それと同時に短剣が飛んで来て石柱に、カーンとあたる。

 「随分と歓迎されてねえみてえだな」

 そう言いながらダランカルは短剣が飛んできた方へ向きを変えたと同時に身構え睨んだ。
 ダランカルの見据える先には体格の良いダークエルフの男性が居て次の攻撃をしようと準備をしている。

 「当たり前だ。あんな得体の知れない者を魔王と言っているヤツを歓迎できると思ってるのか?」

 短剣を生成できるらしくダークエルフの男性は数本を宙に浮かして、そこから一本とり攻撃するため構えた。

 このダークエルフの男はルウクシェス・リュエイト。以前は前魔王に仕えていた四魔帝の一人である。
 そうそう、ダランカルも四魔帝の一人だ。

 ん? ライゼアもなのかって? いや只、魔王のように強い男が好きなだけだ。まあ、その毒素も真生により吸引されて浄化されたのだが。

 「待て! お前と、やり合うために来た訳じゃねえ」
 「フンッ、そんなの関係ない」
 「話を聞いてからでもいいんじゃねえのか?」

 そう言いダランカルは必死でルウクシェスの怒りを鎮めようとする。

 「話だと……オレは、お前となどしたくもない!!」
 「じゃあ魔王さま……いやマオウ様と話すならいいのか?」
 「ああ……そういう事だ。待て! なぜ魔王で言い直した? それも同じ魔王じゃないか」

 さっきまでルウクシェスは怒っていたはずだ。しかしダランカルの発言に対し不可解に思い怒りが消えているようである。

 まあ元々ルウクシェスはダランカルと本気で戦うつもりなんかなかったようだ。そう本気であれば既に戦闘になっている。
 ダランカルも知っていたから警戒はしていたがルウクシェスを攻撃しなかったのだ。

 そう問われダランカルは真生の本当の名前が、マオ・カリノで魔王マオウと名乗っていることを話した。

 「そういう訳か。それで今の口ぶりだとマオウは逢ってくれるのか?」
 「そうなる……だが魔王さまの方から逢って話したいらしい」

 それを聞きルウクシェスは悩んだあと、コクッと軽く頷きダランカルを見据える。

 「面白い……どういう事で、オレと話したいと思ったか分からんがな」

 その後ルウクシェスは「逢ってもいい」と言い、ニヤリと笑みを浮かべた。
 それを聞き安心したダランカルはルウクシェスに真生と逢う日時を伝える。

 「明日か……早いな」
 「その日じゃ駄目なのか?」
 「いや問題ない。だが、なぜ明日なんだ?」

 そう問われダランカルは理由を話した。

 「魔王さまは色々と忙しい、この世界のことや城のことなどを勉学中だ。それだけじゃねえ……他にも色々やることがあるからな」
 「……なるほど。思ったよりも真面なようだな。これは明日、逢えるのが楽しみだ」

 本当に楽しみのようでルウクシェスは口角を上げ笑みを浮かべている。
 そういえば何時の間にかルウクシェスは短剣を消していたようだ。
 その後ダランカルはルウクシェスと建物の中に入る。
 そして暫くの間、二人は話をしていたのだった。