……――三日が経ち現在、真生は寝室のベッドの上で眠っていた。そう今は明け方である。
 真生の両脇にはライゼアとナシェルが寝ていた。
 まあ何時もの如く二人は勝手に真生の隣に寝ているのだが。
 それでも真生は二人が隣に寝ていても以前より怒らなくなっていた。
 慣れたのもあるが言ってもやめないし注意をするのも面倒になったのである。

 真生の寝室の隣は、アクスファハンの部屋だ。
 そうなるべくアクスファハンを近くにおき監視できるようにである。
 因みに真生とアクスファハンの部屋同士行き来ができるように扉があり鍵はしていないのだ。これは朝、真生のことを起こすためである。
 これじゃ、かえって真生にとって危険じゃないのかと思うだろう。だが、それ自体は分かっていて脅威と思っていないのだ。
 それよりもアクスファハンの裏切りを警戒しているため、なるべく自分の傍におき監視しているのである。

 そんなアクスファハンは扉を開けると一礼をしてから隣の部屋から真生の部屋へ入ってきた。
 そのままベッドのそばまでくるとアクスファハンは真生を見下ろし起こすのを躊躇っている。

 (気持ちよさそうに寝ています。このところ朝から晩まで本を読まれていましたから。ですが、ここで起こさないと昨日のように怒られますので)

 そう思いアクスファハンは真生を起こすため口を開いた。

 「マオ様、朝ですので起きてくださいませ」

 普通の声で起こすも真生は目覚めない。傍で寝ているライゼアとナシェルも起きる気配がなかった。
 そのため今度は大きめの声で同じように起こしてみる。それでも三人共に目覚めなかった。
 その後も徐々に声を大きくし起こすも真生とライゼアとナシェルは目覚める様子がないようである。
 仕方なく真生の耳元で「……――いい加減に起きてください!」とアクスファハンは勢い余って大きめの声で言ってしまった。
 ハッと驚き飛び起きて真生は、アクスファハンの額に思いっきり頭をぶつける。
 勢いそのままでアクスファハンは後ろに仰け反り床に倒れた。哀れなり失神してしまったアクスファハンよ。

 「う……イテェ~…………ん?」

 あまりの痛さに真生は額を摩りながら、キョロキョロと周囲を見回した。

 「なんでアクスファハンが床で寝てるんだ? それも鼻血まで出しているし」

 何がなんだか分からず真生は困惑している。

 「んー……マオウ様……どうしたのですう?」

 まだ眠いようで目を擦りながらライゼアは、ユックリと上体を起こし真生へ視線を向ける。ネグリジェが開けているようだ。

 「ライゼア……みえてるぞ(汗)……」

 そう言い真生はライゼアから目を逸らした。

 「うーう、ん? もう朝かのう?」

 背伸びをしながら起きるとナシェルは真生の方をみる。

 「ああ……朝だ。それよりも、ナシェル……服ぐらい着てくれないか?(汗)……」
 「ウーム……魔王さまが起きた時に喜ぶと思ったのじゃが」

 そう言いながらナシェルは服を着始めた。

 「どういう理屈だ。まあいい……それよりも、なんでアクスファハンが床で伸びてる?」
 「マオウ様の額が赤いですう。ですので……恐らくは起きる時にぶつかったのではないでしょうか?」

 そう言われ真生は自分の額を触りながら床で伸びているアクスファハンへ視線を向ける。

 「起こしてくれたのは、アクスファハンか。んー……これは謝った方がいいな」

 ベッドから下り真生は寝間着の乱れを直した。その後、中腰になりアクスファハンを起こす。
 するとアクスファハンは目覚め上体を起こした。
 それを確認した真生は「起こしてくれたのに、すまなかった」と謝罪する。

 「いえ滅相もありません。私こそ、もう少し小声で話しかければよかっただけですので」

 そう言いアクスファハンは、その真生の心遣いに対し更に魅かれる。
 その後、真生は着替えをするためクロゼットの方へ向かった。
 そのあとをライゼアとナシェルが追いかける。

 「男の私でも魅せられてしまいますね。あのように私では素直に謝れないでしょう」

 そう言いながらアクスファハンはベッドの乱れを綺麗に直していた。