スペーリオルは細々と説明している。
 先ず真生を召喚した者は女神である自分じゃない。
 召喚した者を知っているけれど、そこは真生が調べること。
 本来なら女神を通してじゃないと異世界の者を召喚できない。
 等々をスペーリオルは語っていた。

 “……そうなると俺を召喚したヤツは女神である、スペーリオルの許しなく儀式を行ったってことか?”
 “そうなるね。気づいた時には既にマオが召喚されてた。それに気づいたあとも召喚した者とコンタクトがとれなくてさ。それだけじゃない、ここに君を呼ぶこともできなかったんだ”

 スペーリオルはかなり怒っているようである。

 “なんでだ? それに……それなら、どうして俺がここにいる?”
 “マオのお陰って言った方がいいかな。ううん、アクスファハンが君を威圧……覇気で暴走させてくれたからだね”
 “んー……いまいち分からない。それと、どう関係あるんだ?”

 そう言われるも真生は理解できないようだ。

 “そうだなぁ……召喚されたものは召喚したものと繋がりこの世界に転移させられる。そのためマオは召喚主に逆らえない”
 “ってことは……まさか、その暴走で召喚主との繋がりが切れたってことか?”
 “うん、だからマオを呼ぶことができたんだ”

 真剣な顔でスペーリオルは真生を見据える。

 “繋がりが切れた。じゃあ向こうも気づいているのか?”
 “多分気づいてないね。彼女は容姿、声、魔力、学力って誰よりも勝ってるんだけど……最後の詰めが甘いんだよね。まあ、そのお陰で切れかかったマオとの糸を絶つことができた”
 “なるほど……そうなると操られなくて済むってことか”

 ウンっとスペーリオルは頷いた。

 “その代わり召喚者は、マオの能力をみれなくなったけどね”
 “フッ……かえって好都合だ。それに自分で、なんとかなるしな”
 “そうだね。それで、ここにマオを呼んだ理由だけど。現在、君はフリーなんだよ。だから僕と契約を結ばないか?”

 そう言いスペーリオルは、ニコッと笑みを浮かべる。

 “それも面白そう……って言うと思ったか? 俺は誰にも操られるつもりはないんでな”
 “簡単にはいかないか。だけど、ここは僕のテリトリーだよ……言いたいこと分かるよね?”

 ニヤリと笑みを浮かべスペーリオは真生を目を細めてみた。

 “クッ……逃げられないってことか。だけど、それなら……なんで聞いた?”
 “少しはマオの意思を尊重してあげようと思った”
 “だったら断っても問題ないはずだ”

 そう言われスペーリオは首を横に振る。

 “少しは、って言ったよね。それに僕は、マオのことが気にいっちゃった。んーそうだなぁ……じゃあ契約してくれたら君のやることに口を出さない”
 “どういう事か理解できないんだが”
 “どう行動しようと注意しないってことさ。それに僕と契約しておけば、アドバイスもできるよ”

 真生は迷った。これから先のことを考えたからである。もしかしたら女神の力が必要になるかもしれないと思ったからだ。それと、あることも気になっていた。

 “……契約して俺の能力は、どうなる? それと今のまま魔王になっていいのか?”
 “ギフトの能力は、そのままだけど……今よりもアップすっるよ。でも……魔王かぁ。本当はマオを勇者として召喚したかったんだよね”
 “勇者!?”

 真生の反応をみてスペーリオルが、これはいけるかもと思い笑みを浮かべる。
 そんな真生は勇者と魔王を天秤にかけ悩んでいた。