覇気を抑えられないかと真生は試みた。だが、どうやって覇気を放っているのか分からず無理だと諦める。

 「気を抑えるのは無理そうだ。まあいい、お前をどうにかすれば治まるかもしれないしな」

 そう言い真生は五十センチある段差を階段も使わず飛び降りた。

 「フンッ! 私をどうにかできると思っているのですか? 面白いことを言いますね」

 近づいてくる真生に対しアクスファハンは後退している。
 それだけ真生の放つ覇気を脅威と感じているのだ。それなら降参すればいいだけだと思うのだが。まあ自分が魔王になりたい欲のせいなのだろう。

 「なんで後退している。そんだけのことを言っているなら向かってこいよ。それとも口だけなのか?」

 そう言い放ちながら真生はアクスファハンへと近づいていった。
 自分の意思と真逆にアクスファハンの体は磁石が反発するように真生から距離をおこうと離れる。

 「クッ……言ってくれますね。それでは口だけじゃないことを証明しましょう。まあ、これで骨も残らないでしょうが」

 そう言いアクスファハンは目の前に手を翳し詠唱し始めた。

 《漆黒の闇(リッモムンサチ) 深き底(ウマミヨモ)――――……》

 アクスファハンの長い詠唱に真生は、イライラして来ている。

 (こんなに長い詠唱じゃ隙をつかれ簡単に攻撃を受けるな。コイツは、どうみても前線で戦うタイプじゃない。
 そうだなぁ……待ってる義理はないし。今のうちに能力を発動する準備をしとくか)

 そう思い真生は眼前に手を翳し「スキル【窓ふき】 ステータスオープン」と言い放った。
 そして翳した手を窓をふくように動かすと真生の眼前にステータス画面が現れる。

 (さて……まだ七つしか覚えてない。この中で使えそうなのか。そうなると……これがいいな)

 使うスキルを決める。
 その後、ステータス画面に手を翳し「……――ステータスクローズ」と言い窓をふくように動かした。するとステータス画面が消える。
 それを確認すると真生は眼前に両手を翳した。

 《……――――流れし赤き(ワダネリハマミ)燃えたぎり(コヘラヂニ)沸き上がるもの(ナミハダツコン) 我、命じる(ナネ、テヒビツ) 荒れ狂い噴き上げ(ハネムツヒウミハデ)対象を攻撃せよ(ラヒヒョフヌモフデミレソ)! 漆黒の溶岩(リッモムンソフダノ)暴墳撃!!(ゾフウノデミ)

 真生がそうこうしているうちにアクスファハンは詠唱を終える。すると翳した手を真生の足下へ向けた。すると真生の足下に魔法陣が現れる。
 それに気づき真生は後退し翳していた両手を向けた。
 アクスファハンが放った魔法陣は激しく光を放ち消えたと思ったら周囲が激しく揺れる。それと同時に黒と赤が混じった溶岩が噴き上げた。

 《スキル【掃除機】レベル2 魔法吸引!!》

 ほぼ同時に真生は言い放ち翳していた両手を斜め上に掲げる。
 すると魔法陣と共に、パッと空間に亀裂が入り大きなホースの付いた床用ノズルがあらわれた。
 その大きな床用ノズルは「ウイィィイイイーン……」と音を立てアクスファハンの放った魔法を吸い始める。

 「フゥー……いい感じだ。さて、このあとどうするかだが」

 そう真生は言い放ちアクスファハンを見据える。

 「馬鹿な……なんなんだ? その奇妙な能力は……」

 自分の放った魔法が真生の能力により吸い取られ徐々に消え失せていくのをみたアクスファハンの顔は驚き恐怖していた。

 「この世界に召喚された時に授かった能力の一部だ」

 そう言い真生は、まだ消えていない目の前の魔法を避けながらアクスファハンのそばへと向かう。

 「く、くるな! どんなに、お前が強かろうが……私は認めません」

 顔を引きつらせながらアクスファハンは足を震わせ後ろへ退いた。

 「そうか……残念だ。お前と俺の差が既に出ているって云うのにな」

 アクスファハンのそばまでくると真生は鋭い眼光で睨んだ。と同時に、アクスファハンの頬を思いっきりグーで殴った。
 殴られたアクスファハンは何もできないまま五メートル飛ばされ床に倒れる。

 「おいおい……あんな大見得を切っておいて、こんなもんじゃないよな? 俺の覚悟はどうすんだよ。いや、まだだ。殴り足りない……ライゼア達の分が残ってる」

 真生の怒りは治まっておらずアクスファハンが倒れている方へ向かい歩き出した。