何時になく怒っている真生の体からは威圧など吹き飛ばすほどの覇気を無意識に放っていた。
 やはり魔王として召喚されているだけあり覚醒していなくても、それだけのものを備わっているのだろう。だが、それを真生自体は認識できる訳もなく。
 周囲の者は真生がみえないにも拘らず何処に存在して居るのか知り怒っていることも、その覇気で感じ取り怯えている。
 いや、それは一部の者で半分以上が失神していた。
 勿論そばに居るダランカルやライゼアにナシェルも怯えるほどだ。いや、それだけではない。豹変した真生に対し三人は驚きもしていた。

 (能力を使っていねえにも拘らず、これほどまでの気を放てるのか。今までは、それをしないでいた。
 いや……恐らく魔王さまは自分の中に秘めてるものに気づいちゃいねえな。
 ってことは実戦向きってことだ。これは……本当の魔王として覚醒したら……楽しみしかねえぞ)

 覇気の凄さに気絶しそうになるもそう思いダランカルは、ニヤリと笑みを浮かべている。

 (見る限り、かなり豹変しておるのう。余程いわれたことに対して……いえ、それとは違うのじゃ。威圧されて体が反応し気持ちが高まったのかもしれぬ。
 うむ、この魔王さまも中々なのじゃぞ。只、ウチは今にも失神し倒れそうじゃが)

 顔を赤らめナシェルは真生をみつめヨロケていた。

 (こんなマオウ様をみたことないですう。大丈夫でしょうか?
 覇気はかなりのものですが……もし突然目覚めたものであるならば制御できないかもしれません。
 どうしましょうか……もしそうならば、アクスファハンとのことが済み次第なんとかしないといけませんわ)

 身を震わせながらもライゼアは真生のことを心配し冷静に分析している。

 (姿がみえないと云うのに……なんなんだ! この途轍もない覇気は? この私を動けなくするほどの……これで、まだ覚醒していないというのか。
 厄介だ! これでは私が魔王になるという計画……駄目になってしまう)

 必死で堪えながらアクスファハンは負けじと覇気を真生へ向け放った。
 その覇気は真生に放たれるも多少の影響を受けた程度だ。いや真生はヨロケルも動じずに怒筋を浮かべ顔を引きつらせている。
 そう近くに居たダランカルとライゼアとナシェルがアクスファハンの放った覇気に巻き込まれ失神し倒れたからだ。
 という事は真生にかけられた透明化は解けてしまったのである。
 ナシェルが気を失ったことで自分にかかっている透明化が解けているだろうと真生は、なんとなく理解していた。

 「フッ……予定外だ。まさか、こんな登場の仕方になるとはな」

 そう言い真生は倒れているダランカルとライゼアとナシェルを順にみる。

 「俺の大事な仲間を、よくもやってくれたな。クッ……まあ、お前だけのせいじゃないが。もっと俺が、ちゃんとしていれば違ったかもしれない」

 キッと睨み真生は、アクスファハンへ無意識に怒りの気を放った。
 その気をアクスファハンは必死で堪えている。
 因みに既にあれほど居た魔族は失神している者以外、巻き込まれたくないと何処かに逃げていた。

 「貴方さまが魔王になろうとする輩ですか。私は認めませんよ……異世界の者とて、どうみても只の人間。確かに覇気や威圧は相当なものですが」

 そう言うもアクスファハンは、かなり痩せ我慢をしているようである。

 「覇気? 威圧? お前の言っている意味が分からない。しかし言っていることが正しいなら……能力を使わずに、それを行えるという事か」

 これが本当なら魔王に覚醒できるかもしれないと思い真生は含み笑いをしたあと、アクスファハンを睨みつけた。