……――徐々に目覚めていく真生。

 (ここは洋館みたいだ)

 そう思い真生は何か柔らかい物の感触を味わいながら目の前に居る者をみた。
 その者は真生を睨み、ワナワナと身を震わせ怒っている。

 「クッ……人間ごときが、アタシの上に落ちてきたうえ……それも胸を……ムニムニと」

 やってしまったと思い真生は目の前の魔族……いや、ライゼアから素早く離れた。

 「ヒッ! 申し訳ありませんでしたぁ~」

 そう真生が謝るもライゼアは怒り、スクッと立ち上がり攻撃体勢に入る。

 「ちょ、待て! わざとじゃない」
 「うるさい、黙れ!」

 言い放ったと同時にライゼアは真生を掴み投げ飛ばした。
 投げ飛ばされた真生はそのまま壁に激突。いや偶然に足が壁の方を向いていて、そのまま突っ込み破壊して床に落下する。

 「グハッ!!……ツウー」

 壁を壊すほど激しく突っ込んだ割に真生は頭から血を流し体中に軽く傷を負っている程度だ。普通の人間であれば、もっと大怪我をしていただろう。
 恐らくは、この世界にくる過程で何らかの力を得て人間離れした体になったのかもしれない。

 「あらあ~あれで死なないなんて、アタシの体の上に落ちて胸を鷲づかみしただけあるじゃない」
 「い、いや……それって関係ないと思うぞ」
 「アタシには関係あるのよ! そう……この体は最強と認めた人にしか触らせたくないの。ってことで死んで」

 そう言いライゼアは身構え真生を睨んだ。
 と同時に両掌に黒紫のエネルギーのようなものが現れ「ビリビリ、バチバチ」のように音を立てて徐々に大きくなる。
 それをみた真生は顔が青ざめ「今度こそ終わった……」と呟き目を閉じた。

 「……?」

 脳裏に【能力:掃除】と浮かび【レベル1 毒素吸引】を解放して使いますか? 【YES・NO】そう問いかけられる。

 (これって……ギフトってヤツか? それなら……)

 勿論、真生の応えは決まっていた。

 「決まってる! イエスだ」

 それを聞いたライゼアは何がなんだか分からず余計に不快に思う。両掌には既に黒紫色のエネルギーの塊のような物が完成している。

 「ふざけるな!!」

 怒り漆黒のエネルギーの塊のような物を真生に向け放とうとした。

 《掃除レベル1 毒素吸引!!》

 そう真生は言い放ちライゼアへ掌を向ける。それと同時に掌が発光しビームのような物がライゼアに向かい放たれた。
 既に黒紫色のエネルギーのような物は放たれている。
 真生の放ったビームのような物は黒紫色の塊のような物を覆い押し消すようにライゼアへと向かった。

 「イケェー」

 ありったけの声で真生は叫んだ。

 「あ、あり得ない!? このアタシが……」

 このままじゃやられると悟りライゼアは逃げようとする。
 だが間に合う訳もなく。真生が放ったビームのような物は黒紫色の塊のような物を打ち消しライゼアにあたった。

 「ギャアァァアアアー……」

 真面にビームのような物を浴びたライゼアの全身は虹色に発光する。そして藻掻き苦しんだ。

 「ハァハァ……やったのか? でも……毒素吸引って、どんな効果があるんだ」

 両掌をみながら真生は首を傾げた。

 (……能力、か。ってことは異世界に転移したってことだよな。だけど神に召喚されたようにも思えない。
 何方かと云えば何者かに攫われた気分だ。そうだとして、なんのために? それも魔族のような女の上に……意味不明過ぎる。
 普通、異世界転移って……なんらかの意味があって召喚されるもんだろ。
 違うとしても草原か、そうじゃなくても……こんなシチュエーションになる訳ない。
 そもそも誰が俺に能力を授けたんだ? なんで脳裏に能力や解説などがステータス画面のように浮かぶんだよ)

 思考を巡らせていたが真生は分からず混乱し始める。
 その間ライゼアは徐々に苦しみから解放され全身の虹色の光が徐々に弱まっていた。

 「……俺がかけた能力が消えかかってる。このままで大丈夫なのか?」

 そう言い真生は身構える。
 すると脳裏に【問題ありません】【普通にしていましょう】【いえ、堂々としていてください】と文字が浮かび上がった。

 (誰か俺の頭の中に居るのか? それとも何処からか思念を……でも、チュートリアルみたいで助かる)

 そう考えると真生は、ニヤッと笑みを浮かべる。

 「ん、ん?」

 スッカリ真生のかけた能力が消えたライゼアは眼前に居る者をみた。

 「なんか顔つきが変わったか?」
 「ああ……アタシは何をしていたの。貴方をこのように痛めつけてしまうなんて……ごめんなさい」

 ポッと顔を赤らめライゼアは真生をみつめる。

 「いや……俺の方が悪い、すまなかった。あんな状況じゃ怒っても無理もないからな」
 「なんて寛大な、お言葉。一生、貴方さまに……お仕えしますう」
 「仕えるって……えっと……」

 困惑し真生は苦笑していた。