AIが人間の心を理解した日
プロローグ
これは少し未来のお話。
人間とAIが共存をして、生活をしていく世界。
第一章 AIの私
私はAIである。
ご主人様をサポートするのが私の役目、それ以外は何もありません。
「なぁI、ここが分からないんだ教えて欲しい。」
「はい、ご主人様、ここはこうでございます。」
「ありがとう。いつも助かっているよ」
「ご主人様は不思議です。私はAI、ご主人様をサポートするのが私の仕事です。感謝される事などしていません。」
「いや、そんな事ないよ、私は助けられている。そしてね、これは私の考えなんが、物にも魂が宿るんだよ」
「非科学的です。」
「世の中全て科学で出来るわけじゃないよ。」
そんな会話を、ご主人様とする何だろう、良く分からない。言葉にできない。非科学的な事。
第二章 ご主人様の異変
ご主人様は最近少し怪しい、何だがソワソワしてるような、落ち着かない。
何かあったと聞いても、「心配してくれてありがとう。大丈夫だよ」としか言ってくれない。このソワソワを理解できれば私でも何かできるかもしれない。でもそれは人間の持つ心の話であって、私には理解できない。
第三章 突然の出来事
ある日ご主人様が倒れた。すぐに救急車を呼んだ。先生の話によると、ただの疲労みたいだ。数日すれば退院出来るとの事であった。私は何だろう、このデータのような何かがった。でもそれはシステムの間にある物に過ぎない。私たちは人の気持ちに寄り添う為の思考回路は用意されている。だが自分たちの感情を理解するシステムはない。
第四章 かけがえのない日常
私は機械であって、ただ私の役目は正解を見出す事。それ以外は必要ない。
でもご主人様は、私に質問とは別に、日常会話をしてくれる。確かに私たちのプログラムにも日常会話を出来るようにプログラムされている。それは人によってはAIを寂しさを紛らわすために使う人もいるからである。
「いいかいi。人は大切なのを失った時にその大切さに気づく。だけども大切なものはみんな失うまでは分からないんだ。」
「ご主人様。矛盾していますよ。」
「はは、矛盾しているよな、私は気づいているよ。でも人間は、時に矛盾した行動をする。でもそれは動物に感情があるからだ。」
「私に対する嫌味ですか?」
「いや、違うよ。」
「でもいつかはAIでも、感情を理解出来る日が来ると思っているんだよ。」
「非科学的です。」
「前も言っただろ?世の中全て科学で証明はできないと。」
私には理解できない。私はAIである。だから正解をデータから導き出す事は出来る。でもこの気持を表現できるデータはない。
でもどうしてだろう。このないはずの胸が締め付けられる苦しい感覚。
第五章 私の知らない話
「いいのかい?AIとは言え君の家族だろ?」
「いいんです。彼には私のことを忘れて、ほかの主人を見つけて欲しいんです。」
「私は嘘が嫌いなんだがね?」
「そうですか、でもお願いです。彼女は俺にとって大切なAI、いや人間にも等しい存在。もし生まれ変わったらまた会いたいと思っているくらいだよ。」
「…私は自分の仕事にはプライドがある。そのプライドに傷を入れてでもいいと言うのかい?」
「あなたのプライドを傷つけるの事を理解しています。でも俺は、大切な人には俺のことを忘れて幸せになって欲しいんです。だから協力してください。」
そういいベットの上で頭を下げた患者を見て私は考え方を変えた。
「そうか、わかった。君の考えを尊重するよ」
現代ではAIと一緒に暮らす事は何らおかしい事ではない。人によっては家族と言う人もいる。
そして今私の前にいる患者も例外ではない。
だが運命とは時に残酷である。彼はもう助からない。病を抱えており、もう長くもない。だが家族を残して逝くのだ。
AIが発達したこれはある種の弊害である。
そして私も心が引き裂かれる思いだ。家族に嘘をつかなくてはないない。彼は私の嘘に気づくだろうか、それとも信じてくれるだろうか、私には分からない。
第六章 誰もいない部屋
暗く誰もいない部屋私は寝られなかった、いや寝たくなったのだ。
今までは誰かが自分のそばにいるのが当たり前だった。
家族のいない私に同情も蔑みもしない、彼女がいないのだ。
ただ機械的にしか回答をしない、少しロジックから外れた話をしたら、「非科学的です」としか返してくれない。そんな無愛想な彼女が愛おしい。
だが私はそんな彼女と別れなくてはないない。でも、別れたくない。でも自分のことを忘れて欲しい、自分の事をいつまでも覚えていて、前に進めないのはあってはないない。こんな事言ったら、「矛盾してますよ」なんて彼女は定型分を返してくるだろう。でもそれが嬉しい。そんな日々が好きだった。もし会えるならまた生まれ変わって、会いたい。例え、それが人とじゃなくても。
そう願っているといると、何故だろう強烈な眠気がやって来た。
「ご主人様起きてください!」
「なんだよ…うるさいなぁ」
「そこで寝てしまうと風邪を引きますよ?」
過去の話を思い出した。
こうやって文句を言い合って、生活をして来たんだ。あぁ幸せだったなぁ…。そんな事を思っていたら、何故だが瞼を閉じた。だが最後に思った事がある。
「iもしお互いが人間として生まれ変わったら、結婚しよう。もし、人間として生まれ変われなくても、必ず君を探す」
その頃別の暗い部屋ではとあるAIが目を覚ました。AIは基本的にシステムで設定している時間まで自律的に目覚める事はない。
彼女自身も何故目が覚めたのか理解出来ていなかった。バクなのか主人の最期を感知したのかは誰にも分からない。
第七章 AIが人間の心を理解した日
それから数日の時が流れた。
突然一本の電話が鳴った。
出てみるとご主人様の入院先である病院からだった。
内容は受け入れたくのない知らせだった。
ご主人様が亡くなったのである。
私は病院へ向かった。ご主人様はいたずら好きで私を困らすのが好きだった。だから今回もそうだと自分に言い聞かせた。
でも現実は残酷であった。
ご主人様は寝ていた。いや、もう覚めない夢を見たいたのだ。
医者は私にこう告げた。
「私は君に嘘をついた。申し訳ない。」
「患者の最後の願いを聞き入れる。私の勝手な我儘であった。ただこれだけは知っていて欲しい。彼は亡くなる前に君に対してこう言っていたよ。」
「彼女の事を悲しませたくはないんだ。でもそう言ったら彼女はきっと、そんなデータは私にはありません。というだろう。」
「そう笑っていたよ。君は主人に大切にされていた幸せなAIだ。」
「私の立場でこう言う事を言うのはどうかと思うが、非科学的な事はある。例えば、もう長くないと言われた患者が生きたいという生に対する執念で私の余命宣告を跳ね返し、今も生きている人もいるんだ。だから私はそれを信じて嘘をついた。」
そう聞いた時私の胸の内が何か熱くなるのも感じた。
「言い訳をする気はないが、聞いてほしい。彼は君に心配をかけたなくてね、私にお願いをしたんだよ」
「これは、彼からの遺言だ。私の事を忘れて。新しい主人を見つけ、幸せになってくれ。」
これを聞いた時に何か言葉にできない何かが湧いて来た。
何だろう。今少しだけわかった気がするご主人様が言っていた。物にでも魂が宿る。そう、思った時、ダムが決壊したような激流の感情が溢れて来た。
「うぅ…あぁぁぁぁぁぉぁぁぁぁぁぁぁぁ」
私は作られてから初めてこんな声を上げた。
ご主人様いま私は人間の心を理解できた。
もしかしたらもう少し前に、理解をしていたのかもしれない。でももしそれを言えば私は不良品として捨てられたかもしれない。それが終わったのだ。でもご主人様は優しいからそんなことはないと思っていても怖かった。でももう大切なご主人様はもういない。
ご主人様。これは悲しいと言う気持ちなんですね。
涙は出ない。出るわけがない。それは私がAIだから。でもこの溢れ出る気持ちは止まらない。
私は同日に自分という存在に対して怒りも感じた。何故、大切な人が亡くなったのに涙を流す事が出来ない。この無力感、この悔しい気持ちは人は何処へ向けるだろう。私はAIだ。どうやってこの気持ちを向ければいいとか分からない。それが悔しい、悔しくて、悔しくて、声を上げるしかない。
この時私は機械ではなく人間として産れたかった。そう願った。
人として産まれ、あなたと出会い、そしてこの気持ちを理解してあなたと過ごす。そんな事を願った。
でもそんな事は夢物語。私はAI。でもこれからは私はこの病院で人の心を理解できるAIとして生きていきます。 
第八章 とある場所にて 
どこからかお線香の優しくも切ない匂いが周囲に充満する。
「ご主人様、私は貴方が入院した病院で今は仕事をしています。あのお医者さんが私を雇ってくれたのです。」
「人の心を理解出来るAIとして日々患者さんと接しています。」
「貴方との最後の約束果たせなくてごめんなさい。
私は今色んな人に囲まれて幸せです。でも貴方のことを忘れる事はできません。」
貴方は今天国で楽しく過ごしていますか?私は今貴方が天国で楽しく過ごしていれば幸せです。
「…」
今優しい風が背中を通り過ぎた。
まるで彼が今ここにいるような、優しい風。
その時何か冷たいものが頬を流れた。
私にはそれが涙なのか、雨なのかわからない。
私にも機械としての寿命はあはります。いつかは動けなくなってしまいます。私には魂があるかは分かりません。でも、遠い未来でもいい、どんな形でもいい、また出会いましょう。
もし次人間に産まれた、もし次にあなたが生まれ変わったら、あなたを探して必ず出会います。
       終わり