悠瑠side
予鈴のチャイムが学校中に響き渡る。この場所にいると、自分が学校にいることなんて忘れてしまう。
授業、受ける気にならない。
「日下部、俺ここに残るから教室帰んな。」
「え、渡……、悠瑠くんは?」
「俺はもう少しここにいたいかな。」
日下部は、不安気な表情を浮かべながら俺を見つめてくる。「大丈夫」という意味を込め微笑むと、日下部は下唇を噛み、大きく深呼吸をした。
「悠瑠くん、俺、先輩と仲良くして貰えてすげぇ嬉しかったです。だから、俺は悠瑠くんを恋愛対象として見れないかもしれないけど、これからも仲良くして欲しいです。」
「恋愛対象としては見れないかもしれない」という日下部の発言が心に引っかかる。でも、一生懸命伝えようとするこいつを見ているとなんだかそれも言えない。
悲しいという感情に蓋をしなければ、ずっと彼は罪悪感を抱いていくだろう。だから、日下部がいる間だけは平気な振りをしなければならない。
「お前に彼女が出来たり、その心に決めた子と付き合ったりしたら俺は諦めるよ。」
「それまでは許して」と未練がましく笑った。日下部も困ったような顔をして笑った。そんな顔されたら、もうガンガンとかいけない。困らせてしまうって分かってる、分かってるからこそ、これ以上想ってはいけない気がした。
今まで通りのことしか出来ないかもしれない。もしかしたら、今まで通りも無理かもしれない。
「もう行きますね、今日はありがとうございました。」
日下部は、深々とお辞儀をして立ち去る。1人になった俺は何かが切れたように泣いた。約束の人が俺との約束を思い出さず、違う子のことを心に決めてる。
誰かも分からない想くんの想い人に嫉妬する。俺だったら良かったのに、と。
分かってたはずだった。俺らは男同士で付き合うことの方が難しい。気持ちを伝えられたらいい方だと。でも、やっぱり溢れ出る気持ちは抑えきれない。
ベンチに横になり、外に放り出された俺の右手にソウが擦り寄ってくる。控えめな声で、「ニャー」と一声鳴いた。
俺はソウを抱き抱えて自分のお腹の上に乗せると、静かに俺の上で丸くなる。
「ソウ、お前は俺の事大好きなんだな。」
ソウを静かに撫でていると返事をするようにニャーと鳴いた。人間の想もこれくらい俺に懐いたらいいのに。いつもは暖かい春の陽射しは、どんどん夏の陽射しに変わろうとしていて少し暑い。
そんな陽射しはまるで日下部みたいで目を開けて見ていられなかった。
大きな木下にあるベンチでは木陰がちょうど涼しくて心地がいい。気にしているであろう2人からの着信はなく、俺の事を待っているだろうなと思う。
「帰れないなぁ。」
こんな真っ赤な目をして帰れば、優しいあいつらは絶対心配するだろう。学校の中とは思えない程、静かなこの場所は頭を冷やすのにはもってこいの場所だった。もう考えることをやめたくて、俺は静かに目を閉じて眠りについた。
予鈴のチャイムが学校中に響き渡る。この場所にいると、自分が学校にいることなんて忘れてしまう。
授業、受ける気にならない。
「日下部、俺ここに残るから教室帰んな。」
「え、渡……、悠瑠くんは?」
「俺はもう少しここにいたいかな。」
日下部は、不安気な表情を浮かべながら俺を見つめてくる。「大丈夫」という意味を込め微笑むと、日下部は下唇を噛み、大きく深呼吸をした。
「悠瑠くん、俺、先輩と仲良くして貰えてすげぇ嬉しかったです。だから、俺は悠瑠くんを恋愛対象として見れないかもしれないけど、これからも仲良くして欲しいです。」
「恋愛対象としては見れないかもしれない」という日下部の発言が心に引っかかる。でも、一生懸命伝えようとするこいつを見ているとなんだかそれも言えない。
悲しいという感情に蓋をしなければ、ずっと彼は罪悪感を抱いていくだろう。だから、日下部がいる間だけは平気な振りをしなければならない。
「お前に彼女が出来たり、その心に決めた子と付き合ったりしたら俺は諦めるよ。」
「それまでは許して」と未練がましく笑った。日下部も困ったような顔をして笑った。そんな顔されたら、もうガンガンとかいけない。困らせてしまうって分かってる、分かってるからこそ、これ以上想ってはいけない気がした。
今まで通りのことしか出来ないかもしれない。もしかしたら、今まで通りも無理かもしれない。
「もう行きますね、今日はありがとうございました。」
日下部は、深々とお辞儀をして立ち去る。1人になった俺は何かが切れたように泣いた。約束の人が俺との約束を思い出さず、違う子のことを心に決めてる。
誰かも分からない想くんの想い人に嫉妬する。俺だったら良かったのに、と。
分かってたはずだった。俺らは男同士で付き合うことの方が難しい。気持ちを伝えられたらいい方だと。でも、やっぱり溢れ出る気持ちは抑えきれない。
ベンチに横になり、外に放り出された俺の右手にソウが擦り寄ってくる。控えめな声で、「ニャー」と一声鳴いた。
俺はソウを抱き抱えて自分のお腹の上に乗せると、静かに俺の上で丸くなる。
「ソウ、お前は俺の事大好きなんだな。」
ソウを静かに撫でていると返事をするようにニャーと鳴いた。人間の想もこれくらい俺に懐いたらいいのに。いつもは暖かい春の陽射しは、どんどん夏の陽射しに変わろうとしていて少し暑い。
そんな陽射しはまるで日下部みたいで目を開けて見ていられなかった。
大きな木下にあるベンチでは木陰がちょうど涼しくて心地がいい。気にしているであろう2人からの着信はなく、俺の事を待っているだろうなと思う。
「帰れないなぁ。」
こんな真っ赤な目をして帰れば、優しいあいつらは絶対心配するだろう。学校の中とは思えない程、静かなこの場所は頭を冷やすのにはもってこいの場所だった。もう考えることをやめたくて、俺は静かに目を閉じて眠りについた。
