次の日、学校で迷惑をかけた深山先輩、佐藤先輩、奏志に集まってもらい、昨日のことを報告した。

 「いっぱい迷惑かけてすみませんでした。無事付き合うこと出来ました。」
 「拓也、浩平、支えてくれてありがと。」

 先輩2人は悠瑠くんに泣きながら抱きついた。「良かったね。」と悠瑠くんに何度も声をかける。悠瑠くんも嬉しそうに笑っていた。本当に良い友達がいて少し羨ましく感じた。

 「想、よかったね。」

 いつの間にか隣に来ていた奏志が、俺に拳を突き出してくる。俺にも悠瑠くんに負けないくらい、良い友達がいたんだった。
 
 「うん、奏志もありがとうね。」
 「俺は何もしてないの。想が頑張っただけでしょ。」

 謙遜する奏志の頭をワシワシと乱暴に撫でた。

 「悠瑠くんが1年の廊下に来た日、奏志が行けって背中押してくれたから。この間も、深山先輩に番号教えてくれたから、今があると思ってる。だから、俺、めっちゃ感謝してるんだよ。いい友達が出来たなって思ってる。」

 最後まで言い切ると、奏志は涙を浮かべながら、「想、それは泣かせにきてるでしょ……。」と言って目を擦った。

 「ちょっと、」

 声が聞こえたと思ったら、悠瑠くんは、俺と奏志の間を割って入ってきた。俺と奏志は目を丸くし、悠瑠くんを見つめる。

 「俺の想くんだから。」

 思わず可愛すぎて抱きしめそうになった。危ない危ない、と手でニヤけた顔を隠す。

 「取りませんよ。でも、渡里先輩ってめっちゃ可愛いですね。」

 可愛いと言う奏志を軽く睨むが、本人は気づいてないみたいだ。人見知りな彼が、奏志に近づけるのは俺の友達だからだろうか。

 「渡里先輩、俺とも仲良くしよ。あ、そうだ。ゆーくんって呼んでもいい?」
 「想くんの友達だし、好きにして。」

 こんなにグイグイこられるの慣れてないのかな。少し困っているけど嬉しそうな悠瑠くん。お母さんにも友だちは2人の先輩だけって言われてたし、友だち増えて嬉しいのかな。

 「日下部、悠瑠をちゃんと幸せにしろよ。」
 「そうだよ〜。泣かせたら俺が奪っちゃう。」
 「お、浩平がその気なら俺も狙っちゃおっかなぁ。」
 「じゃぁ、俺も!実物のゆーくん可愛すぎるし。」

 次々と声が上がるのを見て悠瑠くんめちゃくちゃ笑っていた。

 「絶対泣かせないし、奪わせません。奏志も何言ってんの。もう、悠瑠くん人気ありすぎ……。」
 「浩平ならいいかも。」
 「ちょっと、悠瑠くん?!」

 焦る俺を見て、また笑う悠瑠くん。そう言えば、あの頃の悠瑠くんも泣き虫で、からかうのが大好きで、俺がいつも振り回されていたっけ。

 「うそ、想くんがいい。お前じゃなきゃやだ。」

 裏でそっと指を絡ませた。他の3人にバレないように。

 ◇◇◇
 
 あの日を思い出させる夏日の中、2人でいつもの場所でベンチに座る。

 「ソウ、おいで。」

 草むらからひょっこり出てくるソウ。悠瑠くんと離れていた時にここに来たら出てこなかったのに、やっぱり悠瑠くんにしか懐いてないのかな、なんて考えていたが、寄ってきたのは俺の方。

 「え、俺?」

 俺の足にスリスリと寄ってくる姿は本当に可愛い。

 「こいつ俺の気持ち分かるみたいなんだよ。俺が好きなやつには寄ってくの。まだ数人にしか会わせてないけど。」

でも、俺のところに寄って来るってことは、

 「じゃぁ、悠瑠くんは俺のこと大好きなんですね。」

 ニヤニヤしながら俺は悠瑠くんに聞いた。真っ赤な顔を片腕で隠しながら、

 「そうだよ。……悪い?」

 悠瑠くんの顔の赤さがうつった。今めちゃくちゃ暑いのはこの日差しのせいか、それとも目の前の愛しい人のせいか。

 「悠瑠くん、ずっと一緒にいてくださいね。」

 悠瑠くんの頬に手を伸ばし、彼に言う。悠瑠くんは手を重ねてきて、甘く微笑む。

 「ばぁか。……当たり前。」

 おでこをコツンとくっつけて笑い合う。夏の暑さに負けないくらい、俺たちは熱い夏を過ごす。
 もう君を忘れない。会えなかった数年間より、幸せなこれからの思い出を忘れずに悠瑠くんと生きたい。

 「ここ、予約ね。」

 悠瑠くんの左手の薬指にキスをした。
 大人になったらまたこの約束を思い出して、俺たちは時を過ごすのだろう。