悠瑠side

 日下部と離れてから軽い足取りで教室に戻る。朝の嫌な気分が一気になくなっていた。日下部のせいで気持ちは振り回されているけれど、それでも傍にいたいと感じた。
 教室にいるやつらはとっくに帰っていて、やっぱり残ってるのは拓也と浩平だけだ。

 「お前らはいつも残ってくれてんのな。」

 俺が笑うと2人は安心したような顔をした。

 「2人ともお待たせ。」
 「ほんと、ずっと待ってた。」
 「悠瑠、おかえり。」

 俺は教室に入り、いつもの定位置に座った。窓の外を眺めていると、帰宅する日下部の姿。ジッと見ているとこっちを向いて手を振ってくるから振り返した。いつもは俺から振っていたのに、今日は向こうから手を振ってくれた。

 「日下部、また明日!」
 「悠瑠くん、明日は俺が先駅で待ってます。先輩を待たせるなんて出来ないので!」

 明日からは一緒に行こうという意思の表れ。こいつの優しさなんだろうけど、それは俺を期待させる行為だと分かっているんだろうか。

 「答え決まったみたいだな。」

 振り向くと拓也は優しい顔をしてこちらを見ている。俺がこんなに頑張れるのは、拓也や浩平がいつも無条件で傍に居てくれたからだろう。

 「うん、俺やっぱりもうちょい頑張る。」

 2人をまた悲しい顔させちゃうかもだけど、やっぱり日下部と少しでも一緒にいたいんだ。

 「悠瑠が選んだことなら俺は何も言わない。でも、悠瑠が傷ついたら黙ってられない。」
 「うん、ありがとう。俺はお前らがいてくれるから頑張れる。」

 2人は俺の頭をわしゃわしゃと撫でた。あの時声をかけてよかったって今でも思う。
 俺を選んでくれてありがとう。