「ん、朝、か、」

楽しかった春休みが終わり、憂鬱な学校生活が戻ってくる。
満開の桜の木が、僕を外へ誘うように揺れる。

「準備、するかぁ、」

僕は久しぶりに持ったスクールバッグに、
筆箱やらなんやらを入れ、久しぶりに着ると少し
着ぐるしい制服を着て、家を出た。
駅まで歩き、電車に乗り、また歩き、
この道のりを辿ると、さらに気分が落ちる。

「はぁ、嫌だなぁ、始業式」

そんな颯汰の後ろから、元気な声が聞こえてきた。
まだ着慣れない制服を着て、桜の前で写真を撮り、
新たな生活が始まる、一年生、後輩達の声だ。

「一年生たち、元気だなぁ、こんな日に」

今年入ってくる一年生達を流し見ていると、
耳元から聞きなれた声がした。

「そーた、おはよ」
「あ、黒井、おはよ」
「なんかずっと一年生舐めまわすように見てたけど、
もしかしてそういう趣味?」
「は?!違うし!」
「うそうそ、冗談だって、」

まじでぶん殴っていいかなこいつ。
こいつは黒井、きらきら陽キャさんがなぜか
僕と仲良くしてくれている。
さっきの冗談は忘れて、黒井と学校へ向かう。

新しいクラスだ。
席に座ると、隣に黒井がいる。

「なんで黒井がここに...」
「同じクラスだからだよ!!」
「えぇ、、」
「えぇ、、ってなんだよ!また仲良くしてな!」

仲良くしてもらってるのはこっちの方だ。
本当に愛想がいい。
彼女は多分居ないと思う、
なぜならほぼ毎日と言っていいほど僕と
夜中まで通話してるからだ。
さっきまで「きらきら陽キャさん」とか
皮肉気味に言ったけど、ほんとはあいつのことが
好きだ。
恋愛的な意味では全くない。