おぉっ!とどよめきと悲鳴が混合する。
彼は毎回人気投票一位の、未来のセンターと言われていた人物だった。利久先輩も一度も勝ったことがない強者だ。
ここにきて、残るメンバーに人気二位の利久先輩と人気三位の男性が。
そのどちらかが選ばれる可能性が高いだけあって、ふたりの顔は緊張で真っ白になっていた。
「もぉ無理ぃ! 見てらんないよぉーー!」
隣から涙声が聴こえ振り返ると、美海ちゃんが顔を埋めて泣き出してしまう。
先輩のお母さんも彼女の背中をさすりながら、本当に辛そうな表情をしていた。
(そうだよな、今まで先輩が苦しんできたのも知ってるから、夢を叶えてほしくて堪んないよな)
俺は泣いている美海ちゃんの手をとり、ぎゅっと握る。
「ぐすっ……音羽……さん?」
「大丈夫。利久先輩の今までのこと、信じよう。ね?」
俺の言葉に、美海ちゃんは涙ながらにこくこくと頷く。
(手を繋いでると安心する。それは、先輩が教えてくれたんだ)
先輩のお母さん、美海ちゃん、俺で手を繋いで、最後の名前が呼ばれるのを待つ。
(神様、仏様、俺なんでもするから、ゲームだってもう一生できなくていいから。先輩の夢を叶えてください)
そう強く握ったのと同時に、名前発表前の太鼓の音がダンッと合図して止んだ。
<発表します!>
シンと会場が静まり返り、自分の心臓の音だけ激しく聞こえる。
(大丈夫、先輩……頼む!)
<――第一は……! 七海利久ーーーー!!>
バンッと大きな音を立てて、真っ白な紙吹雪が解き放たれ、会場を全体が真っ白に染まる。
その瞬間から、音が消えた。
自分の声も、周りの声も、先輩の声も、何も聞こえない。
祝福の花びらの隙間。
泣き崩れる先輩にミオさんが寄り添う姿をあった。
過去の自分に勝ち、大切な人夢を背負って――先輩は自分の手で、勝ち取った。
俺も、涙が止まらなかった。
人のために泣いたのは、これが初めてだった。

