ステージに、最終メンバー二十人がずらりと横一列に並ぶ。
全員、第一審査から身に着けてきた番組指定の制服を着ていた。
もちろんその中に、先輩の姿もある。
リラックスしているように見えるけどその表情はどこか張りつめていて、運命の瞬間を真剣に待っている顔だった。
<では……ひとりめのメンバーを発表します。第七位………城山大和くん!>
ワッ!と歓声が上がり、選ばれたメンバーを祝福するように、他の最終メンバーたちが囲んだ。
選ばれたメンバーは壇上に上がって気持ちを語った。
<今まで応援してくれたお母さん、お父さん。これからたくさん恩返しするからねーー!>
涙ながらに発表するメンバーに、暖かい拍手が巻き起こった。
ついに夢を手にするカウントダウンが始まったのだ。絶対に大丈夫だと信じているけれど緊張が収まらない。
(大丈夫。先輩はこれまで誰よりも悔しい思いをしてきた。努力もしてきた。だから、絶対に叶う)
声にならない言葉を、先輩に向ける。両手を絡ませ、一心に祈り続けた。
もうここまできたら、神の手でも猫の手でも使ってやるよ!
どんどん名前が呼ばれてゆき、残った席はたったの三つ。
ここから呼ばれる名前は、総合得点でTOP3ということだ。
今まで先輩は上位をキープしてきたから、呼ばれるならそろそろだろう。
<発表します……第三位! 桝矢 翔真ーー!>
キャーと悲鳴に似た歓声とともに、大きな拍手が巻き起こる。
名前を呼ばれた本人は驚いた顔のまま固まっている。
俺も番組を見ていたけれど、彼はいつも順位がギリギリで人気メンバーといわれる立ち位置ではなかった。
けれど後半にかけて一気に成長をしていたイメージがある。
<今まで人気を博してきたメンバーが数多く残っているという、波乱の展開です! あと残すところふたりです!>
司会がさらに緊張を煽るようなことを言い、会場にぴりついた空気が漂う。
先輩もさすがに緊張をしているようで、目をつむりぎゅっと手を握って祈ってる。
俺はステージが近いので先輩の脚がかすかに揺れているのを見逃さなかった。
少しでも緊張が和らいでほしい一心で、大きく口を開く。
「利久先輩ーー! 自信もってーー!」
腹の底から大声を出し、先輩へエールを届ける。
すると、ふわっと会場の空気が和らぎ、あちこちから笑い声が起こった。
<いいね~、後輩君の熱いエール、届きました~!>
先輩は俺の方を見て、まだクスクス笑っている。
よかった。先輩の緊張が少しは柔らかいだみたいで。てか、まだ笑ってるし。
先輩に向けてグーサインを向けると、しっかりグーサインを返してくれた。
<さぁ、気を取り直して第二位の名前を呼んでいきましょう~!>
名前が呼ばれる前の太鼓の音が流れ始め……再び、緊張感が流れる。
俺はもう先輩の顔なんて見る余裕はなくて、ぎゅうっと目をつぶって手が白くなるまで両手を合わせた。
(絶対に先輩は夢を叶える。絶対に、絶対に!! お願いします、神様!)
<では発表します! 第二位は……! 東家 礼斗ーー!>
