そのマイクアナウンスを合図に、パンッと火花が弾けた。
ステージを囲むように閃光が走り、わぁっと歓声が湧き上がる。
ゆっくりとステージが上がってくると、会場のボルテージは一気に最高潮に達した。
絶叫にも近い熱狂が渦巻き、あちこちから名前を呼ぶ声が飛び交っている。
「あっ! お兄ちゃんだぁ~!!」
美海ちゃんの声に、ドキッと鼓動が跳ねる。
先輩はステージの中央で、真っ白な華やかなスーツに、お馴染みの金髪姿で笑顔で立っている。
もう遠くからでも分かる。先輩はすごくリラックスした表情で、腹を決めている顔だった。
(あぁ、安心した。先輩。絶対に大丈夫だ)
勝手だけど、俺はそこでもう、先輩は必ず決めてくれると確信した。
これからグループ別で、課題曲をひとり三曲披露し、歌・ダンスで審査員に得点を出される。
このステージはテレビで生放送され、視聴者もデビューしてほしいメンバーをひとり選ぶことができ、最後、すべての得点が合算されて最終的にデビューメンバーが決まるという流れだ。
つぎつぎと楽曲が披露されてゆき、ついに先輩のステージの番になる。
(あ……近い)
先輩の立ち位置が、偶然にも俺の真ん前になる。
ステージから客席は暗くて見えないかもしれないし、俺の姿に気づいているかは分からない。
曲が始めると、スッとスイッチが入ったように見えた。
悲しくも情熱的な恋愛サウンドの世界観に乗せ、先輩は指先まで神経を使い美しく舞う。
(すごい、な……)
ため息がもれるほど、色っぽいときもあれば、苦し気にもがくような表情で切ない動きもあって――。
目を奪われた。先輩の表現する世界観に没入した。
曲が終わってもまだ感動が収まらなくてぼうっとステージを眺めていると、裏に履ける直前、ふいに先輩がこちらを向いた。
先輩と視線が交わり、一瞬熱く捉えられる。
気のせいとは思えない。先輩は俺に気づいてくれた。
