美緒の叱咤激励が、不思議と胸の奥まで響いた。
 その瞬間、ようやく心と体がひとつになった気がした。

 (そうか。俺、本当は……ずっと瑞稀のために、踊りたかったのかもしれない)

 恋をすると、心が浮かんだり沈んだりする。
 その全部を、俺は瑞稀から教わった。

 このオーディションは、楽しいことばかりじゃなかった。
 むしろ、ほとんどが苦しくて、孤独で、逃げ出したくなるような日々だった。

 それでも俺はやめなかった。
 瑞稀の声を思い出して、瑞稀の写真を見返して、瑞稀が送ってくれたメッセージを何度も読み返して……そうしてると、不思議とひとりじゃない気がした。
 たぶん俺は、いつだって思ってたんだ。
 この道の延長線上に、瑞稀がいるって。

 「ありがとう、美緒。……俺、もう少し素直になろうと思う」

 そう言って笑いかけると、美緒は目を細めて、小さくうなずいた。
 その優しい表情に、胸があたたかくなる。

 瑞稀がもう俺のことなんて何とも思っていないかもしれない。
 もう二度と会えないかもしれない。

 それでも俺は、この身体を使って、歌って、踊る。
 これまで瑞稀に伝えきれなかった想いを、全部ステージで届けようと決めた。