先輩はそう言い残して、ゆっくりと俺のところまで近づいてきた。
亜嵐が体を少しずらして場所を空けてくれたおかげで、ようやく先輩と真正面から向き合える。
先輩は手に持っていた一枚の封筒を静かに差し出し、熱のこもった瞳でじっと俺を見つめた。
「瑞稀、これ……本当は今日、渡すつもりだった最終ステージのチケットだよ」
震える指先で封筒を受け取る。
亜嵐と抱き合っているところを見られてしまったショックもある。
だけどそれ以上に、久しぶりに先輩と話せることの嬉しさが入り混じって、正直、自分の気持ちがわからなくなっていた。
「瑞稀のおかげで、ここまで頑張れた。よかったら、観に来てほしい」
そう告げると、先輩はミオさんに強引に肩を引かれながらも、最後まで俺の目をそらさなかった。
だんだんと遠ざかっていく車をぼんやり眺めながら、心にぽっかり穴が開いたようで、無性に涙がこみあげてきた。
「瑞稀? 大丈夫?」
「……大丈夫なわけ、ねぇよ」
このステージが終われば、先輩は一般人に戻って俺のそばに帰ってくるかもしれない。
そうなればまた一緒にいられる。今日のことだってなかったことにして、リベンジすればいい。
そんな最低な考えばかりが頭をぐるぐる回って、思わず笑ってしまった。
(そんなの……誰が望むんだよ。先輩は誰よりも輝いてるのに、ここにいちゃいけないじゃん)
一緒にいたい、大好きなのに。
でも先輩にはアイドルとして世界に羽ばたいてほしい。
そんな矛盾した思いに戸惑いながら、俺は気づいた。
俺の未来に先輩がいる姿がまったく想像できない。
そして、俺自身も先輩がここにとどまる未来は全く望んでいないってことに気づいたのだった。
亜嵐が体を少しずらして場所を空けてくれたおかげで、ようやく先輩と真正面から向き合える。
先輩は手に持っていた一枚の封筒を静かに差し出し、熱のこもった瞳でじっと俺を見つめた。
「瑞稀、これ……本当は今日、渡すつもりだった最終ステージのチケットだよ」
震える指先で封筒を受け取る。
亜嵐と抱き合っているところを見られてしまったショックもある。
だけどそれ以上に、久しぶりに先輩と話せることの嬉しさが入り混じって、正直、自分の気持ちがわからなくなっていた。
「瑞稀のおかげで、ここまで頑張れた。よかったら、観に来てほしい」
そう告げると、先輩はミオさんに強引に肩を引かれながらも、最後まで俺の目をそらさなかった。
だんだんと遠ざかっていく車をぼんやり眺めながら、心にぽっかり穴が開いたようで、無性に涙がこみあげてきた。
「瑞稀? 大丈夫?」
「……大丈夫なわけ、ねぇよ」
このステージが終われば、先輩は一般人に戻って俺のそばに帰ってくるかもしれない。
そうなればまた一緒にいられる。今日のことだってなかったことにして、リベンジすればいい。
そんな最低な考えばかりが頭をぐるぐる回って、思わず笑ってしまった。
(そんなの……誰が望むんだよ。先輩は誰よりも輝いてるのに、ここにいちゃいけないじゃん)
一緒にいたい、大好きなのに。
でも先輩にはアイドルとして世界に羽ばたいてほしい。
そんな矛盾した思いに戸惑いながら、俺は気づいた。
俺の未来に先輩がいる姿がまったく想像できない。
そして、俺自身も先輩がここにとどまる未来は全く望んでいないってことに気づいたのだった。
