バーンアウトの先の恋。

 「あー……うん、そうかもな」

 本当は不本意だったけれど、俺は引きつった笑顔を崩さなかった。
 強がっていないと、ここに座っていられないほど、心が痛んでいた。
 亜嵐の言うことは正しい。俺は、かなり雑に扱われていると思う。
 忙しくたって、約束は約束だ。せめて「行けなくなった」って、一言があれば諦めもつくのに。

 (先輩からの連絡がないせいで、まだ帰る気になれてないよ。俺)

 「はー、呆れる。帰りたくなさそうな顔してるから、俺が一緒に待ってやるよ。アクアリウム、ついてきて」

 「ん、まぁいいけど」

 少し意地悪な言い方だけれど、亜嵐は哀れな俺に同情して一緒いてくれるのだと察する。
 そういうこいつの、心の真ん中が温かいところが好きだった。
 
 俺たちは食事を済ませ、アクアリウムがある階へ向かう。
 館内のエスカレーターを降りると、静かな水の音とほんのり冷たい空気が体を包んだ。
 色とりどりの魚たちが泳ぐ大きな水槽の前を、カップルたちがゆっくり歩きながら、微笑みあっている。
 少し薄れていた先輩の存在が、俺の脳裏に色濃く映った。

 (先輩とああやって歩きたかったな……)
 
 胸が締め付けられてぼうっと遠くを見ていると、隣にいた亜嵐が「あ」と、思い出したように声を上げる。

 「そういえば、今ゲーム会社のゼットジーピーがここでコラボイベントやってるらしいぞ」

 亜嵐が得意げに教えてくれる。

 「マジで? そういうの結構好きなんだよな、俺」

 「ああ、俺も好きだわ。そういうのは意外だろ?」

 「いや、意外じゃないって」

 笑いながら見つめ合い、少しだけ空気が和らいだ。

 先輩のことは全然頭から離れないけど、亜嵐とこうして普通に話せる時間が、今の俺には一番の癒しだった。

 「やっぱ瑞稀とは話が合うわ。絶交、取り消そうかなー」

 亜嵐はニコッと笑いながら言う。俺も自然と笑みがこぼれた。

 「お前がそこまで言うなら、考えてやってもいいけど」

 「いやいや、お前が言える立場じゃないし」