落ち込んだそのとき、手に持っていたスマホが震える。
(企業のいらないメールだろ。どうせ)
ため息をつきながら画面を確認すると、利久先輩からメッセージだった。
突然のことにスマホを落としそうになる。
けれどなんとか耐え、期待と不安が入り混じりながらそっとSNSのチャットをタップした。
【瑞稀、連絡遅くなってごめん。一月二十九日の正午くらいから会える?】
ホッとし、じわじわと喜びが胸に広がっていく。
先輩が約束を覚えてくれて、日程まで決めてくれたのが嬉しかった。
それに、どんな偶然か。
自分の誕生日に先輩に会えるなんて、神様が俺に味方をしてくれたとしか思えない。
【はい、大丈夫ですよ。銀座で待ち合わせにしますか?】
すぐに先輩が確認してくれるかもしれないと、速攻で返信する。
するとその読みは当たったみたいで、すぐに既読になり【そうしよう! 六越の前のライオン前で待ち合わせで】と、待ち合わせ場所まで決めてくれる。
安堵した俺は、自然と笑みがこぼれた。
今まで心を支配していたどす黒い雲が一気に吹き飛ばされて、晴れ間が見えた。目の前に広がる景色も超良好。
(あと一週間も経てば、先輩に会える。それまで、筋トレ頑張るッ!)
メンヘラの影響で止まっていた筋トレも、再開する。
恋ってすごい力を持ってるんだな。幸せだったらなんだってできる気がするし、辛くなったら何も手につかなくなる。
先輩に振り回されてるようで正直少し悔しい気持ちもあるけど、やっぱり好きの気持ちが大きいし、先輩のことを考えて楽しくなっている自分が好きだ。
こうして俺は先輩に会えるのを毎日の糧にして、一日一日を大切に過ごしていった。
そして、ついに迎えた当日―――。
人が行き交う洗礼された街、銀座に下車した俺は、先輩と約束した六越のライオン像の前までやってきた。
髪の毛も綺麗に整え、慎重に洋服も選んで今日に備えた。
何もかも完璧だった。〝先輩からの連絡が来ていれば〟……。
(どうしたんだろ。何かあったのかな……)
昨日の夜に【今、日本に来てるよ。明日楽しみだね】というメッセージか来ていたから、全然安心していたのだけれど、それ以降ぱたりと連絡が来なくなり、約束の時間を迎えてしまう。
昨日まで連絡がとれていたのだから約束がなくなるなんてことはないと思う。というか、そう信じたい。
だとすれば、先輩が事故に遭ったのか。それとも、オーディション関係で何かあったとしか考えられない。
電話もしてみるけれど繋がらなくて、俺は途方にくれる。
しばらくその場にとどまって待つ。十分、二十分、三十分――……。
心臓が嫌な音を立てて、俺の体力も気力も奪っていく。
(いやだ、まだ、帰りたくない……)
とうとう一時間が過ぎようとしたとき、ポンッと背後から肩を叩かれた。
反射的に先輩だと思い、勢いよく振り返る。
直後、思ってもみない人物を見て、俺は大きく目を見開いた。
「亜嵐……?」

