自分の黒い感情と、純粋に先輩を応援している真白な感情が同居する。
それに自分の将来に対する不安も重なって、毎日が少しだけしんどくなっていた。
でも。それでもきっと、先輩に会えば何もかもが解決しそうな気もしていた。
顔を見て話してたらきっと、俺は以前の自分を取り戻せる気がした。
【瑞稀、ハッピーメリークリスマス!】
【瑞稀、明けましておめでとう。俺はソウルタワーに撮影にきてるよ】
イベント盛りだくさんの十二月・一月も、先輩は写真とともに、メッセージをくれた。
しかし電話をする余裕はないみたいで、最後に声を聴いたのはだいぶ前。
寂しいけれど、仕方がないって必死に言い聞かせる。
先輩は順調に予選を勝ち抜き、オーディションも後半戦に入っているのだ。
今は俺に構ってる暇はないんだろう。
「あれー、瑞稀。来週あんたの誕生日じゃない?」
登校前に朝食をとっていると、壁掛けカレンダーに色々書き込んでいた母親が思い出したようにつぶやく。
気づいたら、先輩が言っていた約束の〝一月の後半〟だ。
「あー、忘れてた」
実際には忘れてはいないけれど、正直そこまで重要な事柄だとは思っていない。
母は大きく一月二十九日のところに、【みずき★誕生日!!】と激しめに記入していたけれど、本人はそこまでテンションは上がってない。
俺は「ごちそうさま」と手を合わせ、重たい足取りで食器を流し台に持っていく。
ポケットにいれているスマホは、震えたり光ったりはしていない。
(んー……これ、ナシとかあるのかな)
この一週間ほど、先輩から音沙汰がない。
未だに明確な日程は伝えられてないし、普通にこの流れからいったら、銀座のイルミネーションの予定は流れそうだ。
番組を見ていると最終審査前の課題曲が発表になっていた。
先輩は現状、人気投票三位。
比較的順位が高い人気者のグループに所属して、今はそのメンバーたちと課題曲のダンスや歌の練習に勤しんでいるだろう。
デビューが目の前にあって、俺なんかに会ってる場合ではないのは明白だ。
思わず肩を落とし、奥歯を噛みしめる。
(仕方ないことだって分かってるし、ちゃんと受け止めなきゃって思ってるけど、きちぃな)

