自宅まであと数メートルというところで、玄関の扉が突然開いた。
中から顔を出したのは、ばっちりフル装備を施した姉だった。
手を繋いでいた先輩と俺を見て、姉は目を見開いたままフリーズする。
一番見られたくない相手に見られてしまい、頭が真っ白になる。
「……あー、あれ。うちの姉貴です」
声が裏返るのを必死に抑えながら手を離す。
先輩はほんの一瞬だけ驚いたような顔をしたけれど、すぐにいつもの涼しい表情に戻った。
「へー、瑞稀のお姉さん。今日はラッキーだな」
(な、何がラッキーなのか、わかんないですが……)
姉は気まずそうに笑いつつも、先輩の端正な顔立ちに見入っていた。
あー、始まった。毎度おなじみの面食いスイッチ、オン。
「信じられないけど……あなた、瑞稀のお友達? 私は姉の香澄です」
「瑞稀の友達の七海です。お姉さん、瑞稀に似てて綺麗ですね」
先輩は柔らかく笑い、あの完璧なアイドルスマイルをばっちりと決める。
案の定、姉の顔はみるみる赤くなり、目にはハートがありありと浮かんでいた。
「あー先輩! また連絡しますんで、今日はほんとこれで!」
恥ずかしさを押し隠しながら、俺は勢いよく言って頭を下げた。
「うん、わかった。じゃ、またね、瑞稀」
姉が若干意識を飛ばしている隙に、先輩と手短に挨拶を交わし、逃げるように自宅に飛び込む。
(やばい、やばい、やばい、マジでどうすんの俺……!)
玄関を閉めた瞬間、階段を駆け上がってきた姉が背後から叫ぶ。
「ちょっと瑞稀ーーー! 今の爆イケ誰!? まさかのBL展開とかある!?」
「い、意味わかんねーし! ただの……仲いい先輩だから!」
「嘘つけ! あれはただの先輩の距離感じゃなかったし、手ぇ繋いでたし、何よりあのイケメン、完全に瑞稀にデレてたって!」
「うるっせぇな……!」
顔から火が出そうだった。なぜ、なぜよりによって面食い製造機の姉に見つかる。俺運悪過ぎない?
観念した俺はその場で立ち止まり、頭をぐしゃぐしゃと両手でかきむしる。
「あーーー、もう……!」
「ふふ。いいなぁ、青春って感じで。瑞稀、もしあの人が彼氏だったら、私、全力でカプ推しするからね?」
「だから違うって……」
だけど、否定の声は思った以上に弱々しくて、自分でも驚く。
姉はにやにやと笑いながら、耳元で「ファイティン♪」と囁き、軽やかにスキップで玄関に戻っていった。
残された俺は、その五分間の悲劇を忘れるために、おぼつかない足取りで自室に戻り、ベッドの上に顔を埋める。
【瑞稀、お姉さん大丈夫だった?】
中から顔を出したのは、ばっちりフル装備を施した姉だった。
手を繋いでいた先輩と俺を見て、姉は目を見開いたままフリーズする。
一番見られたくない相手に見られてしまい、頭が真っ白になる。
「……あー、あれ。うちの姉貴です」
声が裏返るのを必死に抑えながら手を離す。
先輩はほんの一瞬だけ驚いたような顔をしたけれど、すぐにいつもの涼しい表情に戻った。
「へー、瑞稀のお姉さん。今日はラッキーだな」
(な、何がラッキーなのか、わかんないですが……)
姉は気まずそうに笑いつつも、先輩の端正な顔立ちに見入っていた。
あー、始まった。毎度おなじみの面食いスイッチ、オン。
「信じられないけど……あなた、瑞稀のお友達? 私は姉の香澄です」
「瑞稀の友達の七海です。お姉さん、瑞稀に似てて綺麗ですね」
先輩は柔らかく笑い、あの完璧なアイドルスマイルをばっちりと決める。
案の定、姉の顔はみるみる赤くなり、目にはハートがありありと浮かんでいた。
「あー先輩! また連絡しますんで、今日はほんとこれで!」
恥ずかしさを押し隠しながら、俺は勢いよく言って頭を下げた。
「うん、わかった。じゃ、またね、瑞稀」
姉が若干意識を飛ばしている隙に、先輩と手短に挨拶を交わし、逃げるように自宅に飛び込む。
(やばい、やばい、やばい、マジでどうすんの俺……!)
玄関を閉めた瞬間、階段を駆け上がってきた姉が背後から叫ぶ。
「ちょっと瑞稀ーーー! 今の爆イケ誰!? まさかのBL展開とかある!?」
「い、意味わかんねーし! ただの……仲いい先輩だから!」
「嘘つけ! あれはただの先輩の距離感じゃなかったし、手ぇ繋いでたし、何よりあのイケメン、完全に瑞稀にデレてたって!」
「うるっせぇな……!」
顔から火が出そうだった。なぜ、なぜよりによって面食い製造機の姉に見つかる。俺運悪過ぎない?
観念した俺はその場で立ち止まり、頭をぐしゃぐしゃと両手でかきむしる。
「あーーー、もう……!」
「ふふ。いいなぁ、青春って感じで。瑞稀、もしあの人が彼氏だったら、私、全力でカプ推しするからね?」
「だから違うって……」
だけど、否定の声は思った以上に弱々しくて、自分でも驚く。
姉はにやにやと笑いながら、耳元で「ファイティン♪」と囁き、軽やかにスキップで玄関に戻っていった。
残された俺は、その五分間の悲劇を忘れるために、おぼつかない足取りで自室に戻り、ベッドの上に顔を埋める。
【瑞稀、お姉さん大丈夫だった?】
