先輩の家は、俺の家からバスで数駅先の場所から、徒歩で一分くらいの場所にあるマンションだった。
割と近い場所にいながら今まで出会わなかったのは、何故なんだろう。
体育祭の直前でやっと出会うなんて、なんだか不思議な気分だ。
「音羽、久しぶり」
「……っ!」
玄関の扉が開かれてすぐ、出迎えてくれた先輩の姿を見て心臓が跳ね上がった。
先輩は長めの前髪を少し垂らし、いい塩梅にかき上げていてすごく色っぽく見える。
少しメイクも施しているのか、金髪の髪型によく似合うオレンジみかかったチークが親しみやすい印象だ。
「あ、久しぶり、です」
思わず視線を逸らしてぎこちなく告げると、あはは!と明るく笑い飛ばされる。
「なんだよ、お前。緊張してんの?」
「ま、まぁ。てか、マジでいいんですか? 俺なんかがお邪魔しちゃって……!」
「だから言ってんじゃん。妹が会いた―――」
「あっ、こんにちはー! 音羽さんですよね~っ!?」
すぐそばから聞こえてきた明るい声に、はっとして顔を上げる。
先輩の後ろでひょこっと女の子が顔を出し、思わず目を見張った。
切れ長の大きな目に、整った鼻と唇。艶のある黒髪をポニーテールにしている。きっとこの子は……。
「あ、こいつが妹の美海。中学一年生」
「美海です~。今日は来てくれてありがとうございますっ」
先輩が紹介してくれてすぐ、美海ちゃんは屈託のない笑顔を向けてくれる。
クールそうな見た目に反して、笑うと無邪気な子供らしい表情をした。
先輩の妙に落ち着いていて穏やかな雰囲気は、美海ちゃんも纏っているような気がした。
「いえいえ、こちらこそありがとうございます。あ、これ……お誕生日おめでとう」
花束とブランドのリップが入った紙袋を美海ちゃんに渡すと、「嬉しい! ありがとうございます!」と、にこにこと笑って喜んでくれた。
(やっぱ、先輩の家族ってみんな〝美〟って感じなんだな)
勧められるまま部屋に上がらせてもらうと、先輩のお母さんに対面する。
お母さんは美海ちゃんにそっくりの、クールビューティといった見た目で、先輩と少し違う。
リビングの大きなダイニングキッチンには、すでにごちそうがずらりと並び、オシャレな食器も用意されていた。
「わぁ、お兄さんまたきた。緊張する~……!」

