「せんぱ……」
テントに戻ってすぐ、俺の肩をポンと叩いた先輩の顔を見た瞬間、言葉が詰まった。
やり切った達成感のせいか、それとも先輩への感謝が溢れたのか、自分でもわからない。でも、涙が止まらなかった。
うっすらと見える先輩の顔が、ちょっと驚いたように歪んだ。
(うわ……やばい。大勢の前で号泣とか、俺、超ダサい……)
今までどんなに悔しいことがあっても、泣き顔を見せたことなんてなかったのに。いや、ちょっと事故ったことはあるけど、今回は本当にまずい。
「……ほんと、ありがとうございました。俺、先輩がいなかったら、ここまで来られませんでした」
やっと絞り出した言葉に、先輩はすぐ首を振った。
「そんなことないよ。がんばったのは音羽自身だから。俺は、ちょっと背中を押しただけ。……ちゃんと、自分のこと褒めてあげて」
そう言って、泣いている俺の頭をそっと引き寄せてくれた。
ふわっと香る、先輩の匂い。
あったかくて、安心して、全身から力が抜けていく。
そのまま少しだけ、先輩の腕の中で泣かせてもらった。
周りには応援団のメンバーもいるはずなのに、先輩は構わず俺に胸を貸してくれる。
そういう温かいところに、一層涙を煽られる。
気持ちが落ち着いてきた頃、俺は羞恥を抑えながら身体を離し、恐る恐る先輩を見上げる。
「すみません。洋服、濡らしちゃったかも……」
そう言うと、先輩は少しだけ眉を寄せて、真顔で言った。
「許さん」
「えっ!?」
予想外すぎる返しに動揺していると、先輩はふっと笑って、顔をほころばせた。
「お詫びに、俺と記念撮影してよ」
そう言って、テーブルに置いてあったポシェットからスマホを取り出し、手際よくカメラを起動させる。インカメラに切り替えて、俺のほうにぐいっと寄ってきた。
「わーい。お前と撮りたかったんだよね~♪」
「そ、そうだったんですか」
(無理、無理、心臓が持たん!)
汗と涙で顔ぐちゃぐちゃだし、こんな状態で写真とか本気で恥ずかしいけど、先輩の頼みを断れるわけがない。
そっと肩を寄せられて、距離がぐっと近づく。思わず呼吸が止まりそうになる。
「いくよ?」
先輩が耳元で告げたと同時に、シャッター音が何度か鳴った。
撮り終えたあと、先輩はすぐに撮った写真を確認しはじめる。
(先輩とツーショット……本当に撮っちゃったんだ……)
あらためて自覚すると、心臓の鼓動が一気に速くなっていく。
「いい写真。後で送っとくね」
「あ、はい! お願いします!」
先輩はスマホをしまいながら、名残惜しそうに言う。
軽く手を振って、笑顔のまま先輩はテントを出ていった。
体育祭がすべて終わったあと。
ちゃんと、約束通り。先輩からチャットでツーショットが届いた。
ドキドキしながら、そっと画像を開く。
寄り添うように並んだ俺と先輩。
俺は泣きべそ顔だけど……意外と普通に見えて、少しだけ安心した。
ふたりの頬には、おそろいの星のシールがきらっと光っている。なんだかくすぐったい。
(この写真を見れば、きっと……今日の全部、思い出すんだろうな)
ずっと先輩と、こうして仲良しでいられたらいいな。
スマホを閉じても、ツーショットの余韻が頭の中に残っていて、胸の高鳴りはしばらく止まりそうになかった。
テントに戻ってすぐ、俺の肩をポンと叩いた先輩の顔を見た瞬間、言葉が詰まった。
やり切った達成感のせいか、それとも先輩への感謝が溢れたのか、自分でもわからない。でも、涙が止まらなかった。
うっすらと見える先輩の顔が、ちょっと驚いたように歪んだ。
(うわ……やばい。大勢の前で号泣とか、俺、超ダサい……)
今までどんなに悔しいことがあっても、泣き顔を見せたことなんてなかったのに。いや、ちょっと事故ったことはあるけど、今回は本当にまずい。
「……ほんと、ありがとうございました。俺、先輩がいなかったら、ここまで来られませんでした」
やっと絞り出した言葉に、先輩はすぐ首を振った。
「そんなことないよ。がんばったのは音羽自身だから。俺は、ちょっと背中を押しただけ。……ちゃんと、自分のこと褒めてあげて」
そう言って、泣いている俺の頭をそっと引き寄せてくれた。
ふわっと香る、先輩の匂い。
あったかくて、安心して、全身から力が抜けていく。
そのまま少しだけ、先輩の腕の中で泣かせてもらった。
周りには応援団のメンバーもいるはずなのに、先輩は構わず俺に胸を貸してくれる。
そういう温かいところに、一層涙を煽られる。
気持ちが落ち着いてきた頃、俺は羞恥を抑えながら身体を離し、恐る恐る先輩を見上げる。
「すみません。洋服、濡らしちゃったかも……」
そう言うと、先輩は少しだけ眉を寄せて、真顔で言った。
「許さん」
「えっ!?」
予想外すぎる返しに動揺していると、先輩はふっと笑って、顔をほころばせた。
「お詫びに、俺と記念撮影してよ」
そう言って、テーブルに置いてあったポシェットからスマホを取り出し、手際よくカメラを起動させる。インカメラに切り替えて、俺のほうにぐいっと寄ってきた。
「わーい。お前と撮りたかったんだよね~♪」
「そ、そうだったんですか」
(無理、無理、心臓が持たん!)
汗と涙で顔ぐちゃぐちゃだし、こんな状態で写真とか本気で恥ずかしいけど、先輩の頼みを断れるわけがない。
そっと肩を寄せられて、距離がぐっと近づく。思わず呼吸が止まりそうになる。
「いくよ?」
先輩が耳元で告げたと同時に、シャッター音が何度か鳴った。
撮り終えたあと、先輩はすぐに撮った写真を確認しはじめる。
(先輩とツーショット……本当に撮っちゃったんだ……)
あらためて自覚すると、心臓の鼓動が一気に速くなっていく。
「いい写真。後で送っとくね」
「あ、はい! お願いします!」
先輩はスマホをしまいながら、名残惜しそうに言う。
軽く手を振って、笑顔のまま先輩はテントを出ていった。
体育祭がすべて終わったあと。
ちゃんと、約束通り。先輩からチャットでツーショットが届いた。
ドキドキしながら、そっと画像を開く。
寄り添うように並んだ俺と先輩。
俺は泣きべそ顔だけど……意外と普通に見えて、少しだけ安心した。
ふたりの頬には、おそろいの星のシールがきらっと光っている。なんだかくすぐったい。
(この写真を見れば、きっと……今日の全部、思い出すんだろうな)
ずっと先輩と、こうして仲良しでいられたらいいな。
スマホを閉じても、ツーショットの余韻が頭の中に残っていて、胸の高鳴りはしばらく止まりそうになかった。
