「最初から来る気なんてなかった。どうして無理矢理連れてきたりなんてしたの」


「それは…」


「朝陽くーん。次朝陽くんの番でしょー?始まってるよお」



クラスメイトからマイクを渡された汐江くんが慌てたように歌い出し、その様子に周りにいた人達が笑う。


…ああ、嫌だ。早くこの場から去りたい。



汐江くんが歌に夢中になっている隙に、人の間を縫ってなんとか外に出る。



部屋の外は、かすかに中の音が漏れ聞こえてくるだけで静かだった。


この静けさが私には心地よい。



無駄な時間を過ごしてしまった、と早急に帰ろうとすると、ふと人の言い争う声が聞こえてきた。



「だから、離してって!」