…どうして私はこんな場所にいるんだろう?



うまいとはお世辞でも言えないような歌唱力を披露しているお調子者キャラの男子を、ぼーと眺めながらそんなことを考える。


私はたしかに帰ろうとした。


それなのに、何を考えているのかよくわからない汐江くんに無理矢理カラオケに連れてこられて、しかも帰らせまいとど真ん中の席に座らされたため身動きも取れない状態だ。


…なんなのこれ。



「如月さん、飲み物何がいい?」



こちらの気も知らないでニコニコと呑気に笑う汐江くんを、きっと睨みつける。



「私、帰りたいんだけど」


「え、なんで?まだ始まったばかりだよ?」