呼び止めてきた汐江くんを無視して、玲音とさっさと学校を出る。



「さっきの、同じクラスの汐江だろ?何もされなかった?」


「だから何もされてないって。連絡先聞かれただけで、それも教えてないし」


「ならいいけど、危ない時はちゃんと助け呼べよ。おまえのことだから、すぐ一人でなんとかしようとするだろ」



ずきりと少し胸が痛んだ。


…助けを呼んだって、意味がない。それなのに、どうして呼ばないといけないの?



「明日香?」



黙り込んでいる私を怪訝に思ったのか、玲音が顔を覗き込んできた。



「…なんでもない」



私の小さな呟きに、玲音がそれ以上何かを言ってくることはなかった。