「知らなかった…」



十五年間生きてきて、この街で星が見えるなんて知りもしなかったし、探そうともしなかった。


星なんて見えないと、勝手に決めつけてしまっていたのかもしれない。



「夜って涼しくて、静かで、綺麗な夜空も見えて、俺結構好きなんだよね」


「…私はずっと夜が嫌いだった。いつかこの暗闇に呑み込まれちゃうんじゃないかって考えちゃって、一人ぼっちのような気がして怖くて、なるべく夜は外を出歩かないようにしていたの。早く朝が来ればいいのにってベッドの中で思ってた」


「たしかに、夜は怖いね。気分が落ち込んでいる日なんかはもっと憂鬱な気分になることだってあるし」



旭も私と同じことを思っていたことがちょっとだけ嬉しくて、こくんと頷く。



「でもさ、夜が来るから朝が来るんだよ。明日が来る。太陽みたいな明るさはないけど、月だって俺たちをいつだって優しく照らしてくれてる。君は、一人ぼっちなんかじゃないよ。少なくとも今は君の隣に俺がいる」



不思議と、旭と話しているとすごく穏やかな気持ちになれる自分がいた。


まるでずっと前から旭の隣が私の居場所だったかのように落ち着いて、大嫌いだったはずの夜が今はちっとも怖くなんてなかった。