まだ裏切られる苦しみを知らなかった頃、小学四年生の時に私は君と出会った。



「ねえ、もう夕焼けチャイム鳴ったけど、帰らないの?」



夕方の誰もいなくなった公園で、君は一人泣きながらブランコに乗っていた。



「なんで泣いてるの?」


「…っ、俺…帰っても誰もいないから…っ。だから、帰りたくない…っ!」


「え…?お母さんとお父さんは?」


「お父さんは仕事。お母さんは…いない」



どうしてお母さんがいないのか、その時は別に気にならなかった。


ただ目の前で泣いている男の子を笑わせてあげたくて、その手を取ってにこっと笑顔を作る。