「私は高校で、もう一度信じたいと思えた人たちと出会った。一歩を踏み出すことは最初は怖かったけど、私はその人たちに救われたよ。毎日が楽しくて、幸せで、忘れていた気持ちをたくさん思い出した。お父さんがいた思い出は全部苦しくて憎いものだけじゃないよ。楽しかったこともたくさんあった。お母さんにとっては初恋で、本当に大切な人だったって知ってる。だから忘れなくたっていいんだよ。少しずつ過去に、思い出に変えていこうよ。私と今をどう生きるか、それを一緒に考えていかない?」



現実から目を逸らさずに、私からお母さんに寄り添ってあげるべきだったんだ。


朝陽が私にしてくれたように。



「私はお母さんの子どもでよかった。産んでくれて、ありがとう」



ぽたぽたと写真に涙が落ちる音が、静かなリビングに響いていた。



「お母さん…?」



お母さんは静かに泣いていた。



「…何も、知らなかった。明日香のこと、知ろうともしなかった。あの人が出て行ってから何もうまくいかなかったから。毎日すごくイライラして、お酒を飲んでいる間だけは全部忘れられたから。私は私を守るだけで精一杯だった…」