手元から目を離さないお母さんの前に立ち、はっと息を呑む。


お母さんが見ていたのはまだ幸せだった頃の三人が写っている家族写真だった。



「…私ね、中学の頃に親友だと思っていた友達に裏切られたことがあるの。そのすぐあとに大好きだったお父さんも出て行った。それから私はもう誰かを信じて生きるのはやめようって思ったの。もう裏切られて傷つきたくなかったから。大切な人を失うと、心にぽっかり穴が開くようなあんなに苦しい思いをもう二度としたくなかったから」



声が震える。


こんなこと言ったって、もしもお母さんに何も響かなかったらどうしよう…。



「だけど、自分から望んだことなのに一人ぼっちで過ごす毎日はもっとずっと苦しくて、寂しかった。死にたいって何度も思ったよ」



光がない世界で生きるのは、心を殺していくのと同じだった。


そんなボロボロに傷ついて泣いていた私の心に手を差し伸べてくれたのは、いつだって朝陽だった。


ずっと誰にも打ち明けられなくて、でも本当はずっと誰かに聞いて欲しかった私の気持ちを朝陽は少しずつ引き出してくれた。


何重にも鎖で縛りつけていた私の本音を、朝陽だけは諦めずに何度も解こうと歩み寄ってきてくれた。