ずっと“あの日”にとらわれ続けているお母さんを見ているのが辛かった。



「…お父さんのこと、まだ待ってるの?」



ぴくりとお母さんの肩が震えた。



「お父さんはもう帰ってこないんだよ。いい加減前に…」


「あんたに何がわかるのよ!」



ぱしんっと頰を叩かれる。



「初恋だったのよ…。本当に大切な人だった、大好きだった…。裏切られることがどんなに苦しいか、あんたにはわからないでしょ!あんたのせいで私の人生は滅茶苦茶よ!どうして…。こんなことになるなら、あんたなんて産まなきゃよかった!」


「…っ」



我慢できなくなり、思わず家を飛び出す。