…違うよ、朝陽。私は逃げたんだ。


希望なんて何もない毎日から逃げた結果、たまたまこの世界で幸せを手に入れてしまったんだ。私はなんてずるいんだろう。



「…明日香?どうして泣くの?」


「…違うっ。私に明日なんてあっちゃ、だめなんだよ…っ」



楽して手に入れた幸せなんてきっといつかなくなってしまう。


朝陽たちと離れてしまうかもしれない未来が、どうしようもなく怖かった。



「じゃあ、もしも明日香が辛くて苦しくてもう無理だってなったその時には、明日(明日香)(朝陽)が照らすから」


「…え?」


「必ず俺が助けるから」



涙を拭ってくれた朝陽が、そっと顔を近づけてくると優しく唇を重ねてきた。


遠くで花火の音が聞こえていたけど、今はもう何も聞こえなかった。



私は今になってやっと気づいた。


この世界で私は朝陽に恋をしてしまったのだと。