どうやって家まで帰ったのか、自分でもよく覚えていない。


落ちていたハサミで縄を切り、破れた体操着からまだ濡れている制服に着替えて、気がついた時にはもう既に家の目の前まで来ていた。



怒りとか、羞恥心とか、悔しさとか、そんな気持ちはなかった。


全てが、どうでもよかった。



家に入ると、玄関にはヒールが一足脱ぎ捨てられていた。


…またか、と小さくため息を吐きリビングの扉を薄く開ける。


今日は夜勤でいないはずなのに、もう帰ってきているということはまた仕事がクビになったからだ。



思った通り、机にお酒の空き缶を山ほど積み、突っ伏して寝ているお母さんの姿があった。



嫌なことがあるとお母さんはお酒をやけ飲みする癖がある。