重なっていた唇が、ゆっくりと離れていった。背中に回された和寿の腕に力が込められた。体温をより感じて、幸せ感しかない。僕は、和寿の肩に頭をもたせかけた。和寿は、僕を抱き締めながら片手で頭を優しく撫でた。何て心地いいんだろう。
「ここが伯父さんの家じゃなかったら、おまえの事、押し倒すんだけどな」
からかうようにニヤリと笑って、和寿が言った。頬が熱くなっていくのを感じていたが、
「それだけ元気なら、すぐに治るね」
わざと、少し冷たい口調で言ってやってから立ち上がり、和寿に背を向けた。
「おい、待てよ。もう帰るのか?」
慌てたような声でそう言われて、僕は和寿の方へ振り向いた。僕は和寿と視線を合わせると、低く言った。
「和寿。僕はずっと、君を好きで……でも、明るい未来を期待出来ないってわかってたから、なかったことにしようとしてた。君に告白されても、それを信じていいのかわからなかった。君が同性を好きになる人だとは思えなくて。信じて裏切られるのも嫌で。身動きが取れなくなってた。和寿が風邪を引かなかったら、僕はまだ自分の気持ちを……真実を言えなかっただろうね。風邪に感謝するよ」
僕は和寿のそばに戻ると、自分から和寿を抱き締めた。一瞬の間の後、和寿も僕をギュッとしてくれた。
──ああ。僕は本当に、どうしようもなく和寿が好きなんだな。
僕は体を少し離すと、
「和寿。もう一度言うよ。僕は君のこと、大好きだよ」
「ああ」
「だからね。早く良くなって、帰ってきてね。待ってるからね」
「ワタル」
和寿は僕の頬に、音を立ててキスをした。伯父さんたちに聞こえたらどうする気なんだろう。心臓が急に速く打ち始めた。
「か……和寿。ここは、伯父さんちだよ」
「だから何だ? オレの気持ちは、伯父さんに知られたって構わないんだ。ごまかそうとしたら、それこそ、おまえに信用されなくなる。オレはオレに嘘吐くのは嫌なんだ」
「和寿……」
「ワタル。オレ、おまえが好きなんだからな。わかったか? だから、もう一回……」
言うなり唇を合わせてきた。その温もりに、僕はただうっとりしてしまう。僕はかなり重症だ。わかっていても、この気持ちは止められない。
僕は和寿から離れると、
「もう、僕……帰るね。東京で待ってるから。早く帰ってきてね。約束」
小指を和寿の目の前に差し出すと、和寿は僕の小指に唇を付けた。
「違うってば。約束。小指と小指を絡めるんだよ。知らないの?」
戸惑いながらそう訊くと、和寿は笑い出し、
「いや。知らなくはないけどさ。ちょっとふざけただけだよ」
「和寿……」
翻弄される僕。でも、それも悪くないなと思ってしまう。今僕の心にあるのは、怒りではなく、くすぐったいような、ふわふわしたものだ。全然嫌な感じはしていない。
「じゃ、ほら」
そう言って和寿は、僕の小指に彼の小指を絡めてきた。そうされて僕は、変に緊張してしまった。
「ワタル。じゃあな。次は東京で会おう」
「うん。待ってる」
微笑む僕の頬を撫でる和寿の目には、優しさが見て取れた。離れがたかったけれど、僕は立ち上がった。今度は、引き留める言葉はなかった。
──元気になって帰ってくるんだよ。
心の中で、和寿に話し掛けた。僕は振り向かずに、和寿の部屋から出ていった。
「ここが伯父さんの家じゃなかったら、おまえの事、押し倒すんだけどな」
からかうようにニヤリと笑って、和寿が言った。頬が熱くなっていくのを感じていたが、
「それだけ元気なら、すぐに治るね」
わざと、少し冷たい口調で言ってやってから立ち上がり、和寿に背を向けた。
「おい、待てよ。もう帰るのか?」
慌てたような声でそう言われて、僕は和寿の方へ振り向いた。僕は和寿と視線を合わせると、低く言った。
「和寿。僕はずっと、君を好きで……でも、明るい未来を期待出来ないってわかってたから、なかったことにしようとしてた。君に告白されても、それを信じていいのかわからなかった。君が同性を好きになる人だとは思えなくて。信じて裏切られるのも嫌で。身動きが取れなくなってた。和寿が風邪を引かなかったら、僕はまだ自分の気持ちを……真実を言えなかっただろうね。風邪に感謝するよ」
僕は和寿のそばに戻ると、自分から和寿を抱き締めた。一瞬の間の後、和寿も僕をギュッとしてくれた。
──ああ。僕は本当に、どうしようもなく和寿が好きなんだな。
僕は体を少し離すと、
「和寿。もう一度言うよ。僕は君のこと、大好きだよ」
「ああ」
「だからね。早く良くなって、帰ってきてね。待ってるからね」
「ワタル」
和寿は僕の頬に、音を立ててキスをした。伯父さんたちに聞こえたらどうする気なんだろう。心臓が急に速く打ち始めた。
「か……和寿。ここは、伯父さんちだよ」
「だから何だ? オレの気持ちは、伯父さんに知られたって構わないんだ。ごまかそうとしたら、それこそ、おまえに信用されなくなる。オレはオレに嘘吐くのは嫌なんだ」
「和寿……」
「ワタル。オレ、おまえが好きなんだからな。わかったか? だから、もう一回……」
言うなり唇を合わせてきた。その温もりに、僕はただうっとりしてしまう。僕はかなり重症だ。わかっていても、この気持ちは止められない。
僕は和寿から離れると、
「もう、僕……帰るね。東京で待ってるから。早く帰ってきてね。約束」
小指を和寿の目の前に差し出すと、和寿は僕の小指に唇を付けた。
「違うってば。約束。小指と小指を絡めるんだよ。知らないの?」
戸惑いながらそう訊くと、和寿は笑い出し、
「いや。知らなくはないけどさ。ちょっとふざけただけだよ」
「和寿……」
翻弄される僕。でも、それも悪くないなと思ってしまう。今僕の心にあるのは、怒りではなく、くすぐったいような、ふわふわしたものだ。全然嫌な感じはしていない。
「じゃ、ほら」
そう言って和寿は、僕の小指に彼の小指を絡めてきた。そうされて僕は、変に緊張してしまった。
「ワタル。じゃあな。次は東京で会おう」
「うん。待ってる」
微笑む僕の頬を撫でる和寿の目には、優しさが見て取れた。離れがたかったけれど、僕は立ち上がった。今度は、引き留める言葉はなかった。
──元気になって帰ってくるんだよ。
心の中で、和寿に話し掛けた。僕は振り向かずに、和寿の部屋から出ていった。

