雨side

「彗、そこに立ってるだけじゃなくて野菜切ってよ!」

「あ。ご、ごめん」
このたどたどしい言い方が、雫に油を注いだ。テントにいた時のギスギスした雰囲気が今も続いている。

「ねぇ、雨。彗全然喋んないし、二人でやろ」

彗はどうするの。心の中でそう返した。野外炊飯が始まってから話さないし何もしてくれない彗に腹がたったらしい。けど私は、彗は話すのが苦手な子だからしょうがないと思うし、二人だけで準備するのはどうかと思った。それよりも、今日から明日の朝まで三人一緒に生活するからなるべく喧嘩はしたくない。雫に言われると「嫌だ」なんて、死んでも言えなかった。

「わかった」

*


今日作ったカレーは、味がしなかった。