(あめ)side






私は、周りの目が怖い。






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「今日も3時間しか寝れなかった」

10時に寝たのに、まだ時計の針は1時を指している。窓の外を見ると月が出ていて生憎の雨だった。空から零れる雫は、まるで私の変わりに泣いてくれてるように見えた。もう一回寝ようとしても、ズキッと頭の何処かが痛む。本当はもっと寝ていたいのに。夜明けを眺めながらまた同じような1日が始まるのを感じるのは嫌いだから。けど、いつも寝たくても寝れない。スマホを手にとってイヤホンを耳にあてる。

音楽を流しながらそっと目を閉じた。




イヤホンから流れる音楽を聞いていたら、カーテンの隙間から暖かみのある光が漏れていた。結局寝れたのは3時間だけだ。「今日はちゃんと眠れますように」と願いながら寝たのに、私の願いは今日も叶わなかった。




*




「次の……数学だ…て」
「え、だ……」
「ほ…め、急いで!」

「二人とも待ってー」

「…って落……いでね!」

階段を転びそうになりながらかけ降りる。

二人の声が上手く聞きとれない。霧がかかってるかのように周りの音が聞こえない。睡眠時間が足りていないせいだ。周りの音の方が大きくて、そっちの声に気を取られてしまう。

ふいに知らない人の声も同時に聞こえた。


「……きもいよね」
「最近………だし」

焦って振り替えると、他の音で描き消されてその声は見失った。私はいつも、この現象に悩まされている。悪口だけが切り取られて耳に入ってくるの



あの、トラウマから。



*


「雨って、うざくね?」

「それな」

「話かけ方きもい」

「ねーねーだって。もっと他にあるでしょ」

目眩がする。
忘れたはずなのに。



「雨って、なんかきもいよねー」


走馬灯のようにあの時の出来事がよぎる。


まだこの過去に縛られている。もう、高校生なのに。過去色まみれの私が漂っている。遠い過去なのに、昨日の楽しかった記憶よりも鮮明に思い出せる。

涙が溢れそうになる。ぎゅっと目をつぶった。二人の前で突然泣き出したら変なやつだと思われる。

「雨、どうした?!泣いてるよ」
あれ、と思って頬に手を当てると濡れている。

「何で泣いてるの?」


そんなこと聞かれたって私でも分からない。過去の記憶が溢れてきて、無意識に流れる涙も止まることを知らない。



茜色の光に包まれる頃。

確か、あの時は冬だった。教室には先生と私だけ。放課に陰口を聞いてしまって、一人うずくなって泣いている私を先生が見つけてしまった。

「何かあったん」

「わかりません。」

「何で、泣いてるの」

運が悪いのか、私が泣いてるのを見た先生は担任だった。

「私でも、何で泣いてるか分からない」

話したくないから、ずっと「分からない」の一点張りで話していたら次第に先生の方から折れてくれて「なんかあったら言うんだぞ」の一言で話は終わった。



私は、あの頃から少しも変われてない。