(しずく) side




うちは、クラスで嫌いなやつがいる。






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「あ、晴れてる」

目が覚めてから窓の外を見ると、ひどく綺麗な青だった。

時計を見ると、まだ3時だ。数ヶ月前から眠れない夜が続いている。なんでこうなったか心当たりはない。別に、最近の生活がストレスになっているわけでもないのに。けれどなんとなく不安な状態が続いている感覚がある。もしかするとこれが原因かも知れない。

とりあえず5時までSMSを見て時間を潰してからベッドから身を起こした。朝起きたらまず、洗面所に向かう。

前髪を崩れないようにセットして、先生にバレないような薄い色のリップを塗る。今日も鏡の前で笑顔を浮かべながら『自然な笑み』ができているかチェックする。学校ではこの仮面をいかに上手く使いこなせるかが、生きていく決め手になる。自分を守るための大事な仮面。

もう一度笑顔をつくる。
不自然な笑みになっていないか確認しながら。

ーよし、大丈夫そうだ。

音楽を流しながら学校に行きたくない気持ちを落ち着かせる。不思議なのが、玄関に出て自転車をこぎ始めると自然と体が学校に引き寄せられる。どんなに、嫌な日でも。

「おはよ~」
「ね、昨日のテレビ見たー?」
「あのアイドル出てたよね~、まじイケメンすぎ」
「それなっ」

うちは、そのアイドルあんま好きじゃないけどね。ぼそっと心の中でそう返した。どうやら話はまだ続いてるらしい。早く鞄下ろしたいなぁ、と思って少し机の方を見た。

「しかも特番だったよねー。あ、ちょっとトイレ行こ」

そんな気持ちが伝わったのか、気を使ってトイレに行った。机に座りながら教室はどんな感じか周りを観察する。斜め隣の席ではいつもの3人組が話している。少し陰キャめの。窓側の方ではもう友達が五人ぐらい集まって話に華を咲かせてる。そして、よりにもよって、隣の席はうちの嫌いなあいつ。確か、名前は(すい)。ツンと尖らせた口。ぼさぼさの髪。手には本。もう二学期も終わりが近づいてるのに友達と話してるのは見たことなかった。けれどそれは気にせず、堂々としている。

それに比べてうちは、友達をつくらないと不安で仕方ない。だからたとえ面白くない話題でも、仮面を被りながら適当に共感してやり過ごす。そうしていれば一人にならずにすむから。友達はファッションだと思ってる。本当は無理して話したくない。

そんな私とは真逆の彗のことが、少し羨ましかった。





だから、嫌い。