彗side

「僕は苦しい時、創作をしてた」


全部が敵に見えたんだ。友達も、親も。第一印象で全部決められて友達には避けてられて、結局はクラスで一人。家にいても自分の性別のことを隠してるから居ずらくて。そんな時、小説に出会ったんだ。たまたま勉強するために図書館にきた時におすすめの本コーナーのところで中高生向けの本があって、読んでみたら自分も書いてみたいと思って。もし、自分の世界が一冊の本になったら、この行き場のないどうしようもない気持ちが楽になれるかもしれない。スマホのメモ帳でひたすら言葉を紡いで、そうするたびに心が軽くなるんだ。

「今も書いてるの?」
「うん。たまにだけどね」

「私も書いてみよっかな」


過去は、変えられない。ふいに辛かった時を思い出すこともある。でも、そんな過去のおかげで今がある。

「いつか良かったと思える日がきっと来る」
そっと聞こえないように呟いた。


「今日このまま寝たら、キャンプも終わりかー」
そう言いながら雫が布団を準備している。時計を見たら、10時になっていた。

「あれ、帰りのバスって朝起きたらすぐ出発?」
「そうだよ」

布団に潜ると、疲れが溜まっていたのか意識が抜けるように目を閉じた。