雨 side
「あ、私が負けだ」
こっそり私も、彗と雫の話を隣で聞いていた。もしかしたら彗の声を今日始めて聞いたかもしれない。入学してから三学期まで声をあんまり聞いたことがなくて、何か話しかけると首をふるだけ。だから雫と話してるのが不思議な光景だった。けど、二人は似た者同士なのかもしれない。
『よくしゃべる人ほど寂しくて。無口な人ほど話したくて』いつか本で見た、そんな言葉を思いだした。いつもよりテンションの低い雫を見て、もしかしたらこっちが素なのかもしれないと思った。
「私、周りの目が怖いの」
何でこんなこと、二人に言ってるんだろ。そう思った時にはもう遅かった。今まで誰も言えなくて閉じ込めていた言葉が溢れてきて、止まらない。こうやって吐き出す場所が私にはずっと必要だったのかもしれない。
「実は、周りに悪口言われてた時期があって」
あの時はまだ、中2だった。
誰から広まったかはいまだに分からない。トイレで用を済ませて、出ようと思った時。「雨ってぶりっ子だよねー。なんかきもくない?」と聞こえてきた。「わかるー」「声高いし」盛り上がる女子達の声。その声の持ち主は、私の友達で。そのことに気づいたとき、私の中の何かが崩れた。
あれから私は周りの目が怖くて、人を信じられなくなった。
本当は今仲良くしている、私を含めて三人組の中の他の二人のことも信じられない自分がいて。無意識に顔色を窺いながら過ごしている。
「ごめん、ガチになって話しちゃって」
「いーよ、全然」
引かれるかと思ったら、受け入れてくれて安心した。やっと心に溜まっていたものが吐き出せて、頭の中をぐるぐる回っていたものが無くなった気がした。
「僕もいじめられてた時あったからわかる」
「彗もそういう時期あったの」
「うん、何か隠されたとかじゃないけどね」
「うちは虐め詳しくないけど、陰湿になってるよね最近」
「僕の時は、女子全員から冷ややかな目を浴びせられた」
「あれ、きついよね」
「僕も人間不信のなりかけたことある」
「どうやって、乗り越えたの?」
「あ、私が負けだ」
こっそり私も、彗と雫の話を隣で聞いていた。もしかしたら彗の声を今日始めて聞いたかもしれない。入学してから三学期まで声をあんまり聞いたことがなくて、何か話しかけると首をふるだけ。だから雫と話してるのが不思議な光景だった。けど、二人は似た者同士なのかもしれない。
『よくしゃべる人ほど寂しくて。無口な人ほど話したくて』いつか本で見た、そんな言葉を思いだした。いつもよりテンションの低い雫を見て、もしかしたらこっちが素なのかもしれないと思った。
「私、周りの目が怖いの」
何でこんなこと、二人に言ってるんだろ。そう思った時にはもう遅かった。今まで誰も言えなくて閉じ込めていた言葉が溢れてきて、止まらない。こうやって吐き出す場所が私にはずっと必要だったのかもしれない。
「実は、周りに悪口言われてた時期があって」
あの時はまだ、中2だった。
誰から広まったかはいまだに分からない。トイレで用を済ませて、出ようと思った時。「雨ってぶりっ子だよねー。なんかきもくない?」と聞こえてきた。「わかるー」「声高いし」盛り上がる女子達の声。その声の持ち主は、私の友達で。そのことに気づいたとき、私の中の何かが崩れた。
あれから私は周りの目が怖くて、人を信じられなくなった。
本当は今仲良くしている、私を含めて三人組の中の他の二人のことも信じられない自分がいて。無意識に顔色を窺いながら過ごしている。
「ごめん、ガチになって話しちゃって」
「いーよ、全然」
引かれるかと思ったら、受け入れてくれて安心した。やっと心に溜まっていたものが吐き出せて、頭の中をぐるぐる回っていたものが無くなった気がした。
「僕もいじめられてた時あったからわかる」
「彗もそういう時期あったの」
「うん、何か隠されたとかじゃないけどね」
「うちは虐め詳しくないけど、陰湿になってるよね最近」
「僕の時は、女子全員から冷ややかな目を浴びせられた」
「あれ、きついよね」
「僕も人間不信のなりかけたことある」
「どうやって、乗り越えたの?」



