雫 side
少し、言いすぎたかな。
自分の怒鳴った声が頭から離れなかった。今は野外炊飯も終わり、テントの中。いまだ私たちの間には越えられない壁があって、それぞれが違う方向を向いて違うことをしていた。雨は疲れきった顔をしていてスマホを眺めてる。彗は本を読んでいた。謝ろうか、迷う。きつく言ってしまったことを今になって後悔した。でも、あいつのこと嫌いだし。少しだけ彗の方を見る。よく見てみると、表紙にはうちの好きな作家の名前が書かれていた。
「その本、知ってる」
気付いたら、声が出ていた。
「え?」
「うちもその本、好きでさ」
「ぼ、僕もこれ好き。一つ一つの描写が透き通ってて、」
彗は口を開くと思ったよりも話すやつだった。興奮して早口になってしまった彗が一瞬言葉を詰まらせる。
「わかる。繊細な表現が良いよね」
「この作家、昔から好きでさ。
特にあ、あの本!神様がテーマの」
「あれうちも好き!」
少し、言いすぎたかな。
自分の怒鳴った声が頭から離れなかった。今は野外炊飯も終わり、テントの中。いまだ私たちの間には越えられない壁があって、それぞれが違う方向を向いて違うことをしていた。雨は疲れきった顔をしていてスマホを眺めてる。彗は本を読んでいた。謝ろうか、迷う。きつく言ってしまったことを今になって後悔した。でも、あいつのこと嫌いだし。少しだけ彗の方を見る。よく見てみると、表紙にはうちの好きな作家の名前が書かれていた。
「その本、知ってる」
気付いたら、声が出ていた。
「え?」
「うちもその本、好きでさ」
「ぼ、僕もこれ好き。一つ一つの描写が透き通ってて、」
彗は口を開くと思ったよりも話すやつだった。興奮して早口になってしまった彗が一瞬言葉を詰まらせる。
「わかる。繊細な表現が良いよね」
「この作家、昔から好きでさ。
特にあ、あの本!神様がテーマの」
「あれうちも好き!」



