おっちゃんとルーナちゃんのお母さんの結婚式が終わって一週間が経ったよ。
 商店街も冒険者もいつも通りで、ポチもミッケちゃんもルーナちゃんもお手伝いを続けているよ。
 今日はパン屋さんでのお手伝いなんだ。

「いらっしゃーい。美味しいパンはいかがですか?」

 ポチは街の人に向かって、一生懸命声掛けをしているよ。
 今日もパン屋さんのおっちゃんが焼いたパンは絶品なのだ。

 カラカラカラ。

 おや?
 あれはりっちゃんの家の馬車じゃないかな?
 何かあったのだろうか。

「あ、領主様とりっちゃんだ」
「おお、ポチちゃんか。今日も元気だな」
「ポチはいつも元気なのだ!」
「それは良い事だ」

 馬車からは、領主様とりっちゃんが出てきたんだよ。
 りっちゃんも、随分スムーズに歩ける様になったなあ。
 でもわざわざ領主様もパン屋さんに来るなんて、何かあったのかな?

「ポチちゃん、マーサさんを呼んでくれないかな?」
「おお、分かった! マーサさん、領主様とりっちゃんが呼んでいるよ!」
「ええ! ちょっと待っていて!」

 おお、りっちゃんがマーサさんを呼んでと言ったのでポチがパン屋の奥にいるマーサさんを呼んだら、マーサさんが慌てた様子でやってきたんだよ。
 流石のマーサさんも、パン屋さんに領主様が来るとなると慌てるんだなあ。

「領主様、お待たせいたしました」
「いやいや、お忙しい所すまんな。実はポチちゃんの事でこちらにきたのだよ」
「え? ポチの事で?」

 おや?
 領主様はマーサさんにポチの事って言ったけど、一体何だろう?
 何だか、周りの人がわらわらとパン屋さんに集まってきたよ。
 ミッケちゃんもリルムちゃんも、何かなってお店の中から顔を出してきたんだ。

「とってもいい事だから、ポチちゃんも安心してね」
「うん、分かった!」
「実はね、ポチちゃんがあの暴れ黒犬を倒した事に対して、国から勲章を授ける事が決定したのだよ」
「「「おお!」」」

 何だか凄い事になっちゃったぞ。
 ポチが国から勲章を貰っちゃうんだ!
 周りの人も驚いているんだよ。

「他にも公衆衛生に寄与したとかで表彰される事も決まっているんだ。それで、明日から十日間程私達と一緒に王都に行くことになったのだよ。その間、お手伝いはお休みとなるので、一応ご報告という事にきました」
「まあまあ、それはわざわざ申し訳ございません。ポチちゃん、王都に行っても頑張るんだよ」
「おお! ポチ、王都に行っても頑張るんだよ!」

 りっちゃんが、領主様の説明の続きを話してくれたんだよ。
 ポチ、王都に行っても頑張るんだよ!

「ポチちゃん、既に司祭様とシスターさんには話をしてあるのだよ。明日の朝、孤児院に迎えに行くからね」
「はい、分かりました!」

 領主様の言葉に、ポチは元気よく手を上げて答えたよ。
 ふふふ、王都かあ。
 一体どんな所なのかな?
 ポチは、何だかワクワクが止まらないんだよ!