たたた。

「とあー!」
「「「ポチちゃん!」」」

 ポチは、大きい黒い犬獣人に向かって走り出したんだ。
 周りが何か言っているけど、ポチは気にしないよ。

「くそ、またかよ」

 ズサー。

「ぐふ、まだまだだよ」

 ポチは、大きな黒い犬獣人の足にしがみついてやったんだ。
 大きな黒い犬獣人が足を振り回して振り落とされちゃったけど、ポチは諦めないよ。
 何回も何回も足にしがみついてやるんだから!

 ズササー。

「本当にしつこいなあ。そのしつこさはうんざりだぜ」
「まだまだ!」

 ブオン。
 バキン!

「ギャン、くうう、当たっちゃったよ……」
「ポチ! 逃げて! また殺されちゃうよ!」

 大きな黒い犬獣人の蹴りが当たっちゃった……
 ポチの左腕がバキンって言っちゃったよ。
 でも、ポチは諦めないよ。
 りっちゃんが何か言っているけど、ポチは負けられないのだ!
 ポチの中のポチが、ポチに負けるなって言っているんだよ!

「とおおおお!」
「くそ、まだ突っ込んでくるのかよ」
「ポチ!」

 ポチは諦めの悪い犬っ子なんだよ。
 何回でもアタックするのだ!

「追加兵きました!」
「突撃!」
「ちぃ」

 おっと、兵隊さんが追加できたよ。
 大きな黒い犬獣人の注意がそっぽを向いたんだ。
 これはチャンス!
 ポチは、このチャンスを逃さないよ。

 たたたた。
 コケ。
 ドカン!

「あああ!」
「ぐふ、お前……そこは……」

 大きな黒い犬獣人がよそ見をしたから絶好のチャンスだったのに、走っていたら石につまづいてこけちゃったよ。
 そのままダイブして、ポチの顔が大きな黒い犬獣人の股間に思いっきり当たっちゃったよ。
 うう、何だか嫌な臭いがお顔に広がっていくよ……

「まだまだ、ポチはまだだよ!」

 ゴチン!

「うう、頭が痛いよお。あれ?」
「ごふ……」

 バタン…

 ポチは再び体当たりしようと思って、思いっきり立ち上がったよ。
 そうしたら、大きな黒い犬獣人の股間に再び頭突きをしちゃったの。
 何だか、ポチの頭が大きな黒い犬獣人の股間に思いっきり当たって柔らかいポールみたいなものがぐちゃってなった気がしたけど、ポチは頭がゴチンとなったから痛いの。
 でも、ポチの後ろで大きな黒い犬獣人がドサって倒れていたよ。
 何だか白目剥いていて口から泡を吹いて体がピクピクしているけど、大丈夫かな生きているかな?

「か、確保!」
「はい」

 急いで兵隊さんが、大きな黒い犬獣人を縄でぐるぐる巻きにしていくよ。
 うーん、何だか知らないけど周りから歓声が上がっているよ。

「痛たた。うお、腕が折れちゃってる!」
「「「ポチちゃん!」」」

 何だかほっとしたら、急に左腕が痛くなったんだ。
 よく見たら、ポチの左腕がぶらんぶらんして腫れているの!
 もう、ポチびっくりだよ。
 ポチの周りには、色々な人が慌てた様子でやってきたんだよ。

「ポチちゃん、ポーションを飲んで」
「私が回復魔法をかけるの」

 ミッケちゃんが、薬屋さんからポーションを受け取ってポチに飲ませてくれたの。
 リルムちゃんも回復魔法をかけてくれるの。
 でも、何だか二人とも涙目だよ。

「ポチ、何で逃げなかったの!」
「りっちゃん……」

 りっちゃんもポロポロと涙を流しながら、ポチに回復魔法をかけてくれたよ。
 何だかあったかくて、とっても気持ちがいいんだよ。

「ポチは、あの大きな黒い犬獣人には一回負けているの。だから、今度は負けられないんだよ。これは、ポチの中のポチも言っているんだよ!」
「ポチ、だからってこんなにボロボロになるまで無理して……」
「これはポチにとって、負けられない戦いなのだ」
「そうね、ポチは昔から頑固だったもんね」

 りっちゃんが苦笑しながら、ポチの頭を撫でてくれたんだよ。
 回復魔法があったかくて、何だか眠くなっちゃった。

「りっちゃん、ポチ疲れて眠くなっちゃったよ」
「はいはい、ポチはいつも疲れるまで動いて直ぐに寝ちゃったもんね。今日はゆっくり休んでね」
「うん……」

 ポチはりっちゃんに頭を撫でられながら寝ちゃったんだよ。

「フシューって寝息が聞こえるね」
「可愛い寝顔だね」
「ポチちゃんもそうだけど、怪我人を治療して病院に搬送しないとね」
「よっしゃ、手分けして動くぞ」

 ポチが疲れて寝ちゃった後、そんな会話を色々な人がしていたんだって。
 これで一件落着だね。