「司祭様、ちょっとよろしいでしょうか」
「おやシスター、いかがなされた?」
「実はこの子の事で」
「おや? この子は、昨晩教会の中にいた子じゃな」

 ポチはシスターさんと一緒に教会に来たんだ。
 教会の中には白髪のお爺さんがいたけど、いったい誰だろう?
 もしかしてえらい人なのかな?

「お嬢さん、お名前を教えてくれる?」
「ポチはポチだよ!」
「ほほほ、元気なお嬢さんだ」

 お爺さんはポチの名前を聞いて来たから元気よく答えたの。
 そうしたらしわくちゃの手で、ポチの頭を撫でてくれた。
 
「ポチちゃん、この像に見覚えはあるかな」

 お爺さんは、教会にある石の像を指差していた。
 あれー?
 あれって、確かつい最近ポチと会ったよね。

「あー、天国であった神様だ!」
「まあまあ」
「ふむ、間違いないじゃろう」

 そうだ、天国で会った神様にそっくりだ。
 ポチが元気よく答えると、シスターさんはびっくりした顔になって、お爺さんは納得したような顔になった。
 一体ポチの発言から、何に納得したのだろう?

「ポチちゃんは違う世界から来たんだね。いわゆる転生者だ」
「転生者?」
「そうだよ。神様が新しい世界に転生するって言っていたんだよね」
「うん、神様が言っていたよ!」
「ポチちゃんみたいに、違う世界からくる人が稀にいるんだよ。そういう人の事を転生者って言うんだよ」
「でも、ポチは前の世界では犬だったよ?」
「大丈夫、今は人間みたいなものだから転生者でいいんだよ」

 うーん、ポチ犬だったのに転生者なんだ。
 何だか良くわからなくなってきたよ。
 ポチが色々分からなくなって頭抱えていたら、お爺さんがまた頭を撫でてくれた。

「悩ませてしまったね。ポチちゃんはこの世界ではポチがやりたい事を一杯やればいいんだよ」
「ポチがやりたい事?」
「そうだよ。ポチちゃんは何がやりたいのかな?」
「ポチね、みんなのお手伝いをしたい! そしてね、いつかはポチのご主人様を見つけるんだ!」

 この世界でポチがやりたい事は決まっているんだ。
 ポチは前の世界でも一杯お手伝いしてきたから、また色んな人のお手伝いしたいんだ。
 そして、いつかりっちゃんみたいなご主人様に出会えたらいいなあ。
 両手も上げて精一杯アピールしたら、お爺さんもシスターさんも笑っていた。
 もう、真剣にアピールしているのに笑うなんてひどいよ。
 ちょっとプンスカしていたら、お爺さんが謝ってきたよ。

「いや、笑ってすまんのう。じゃあ、先ずは一杯お手伝い出来る様に、この世界の事に慣れないといけないね」
「そうですわね。あとポチちゃん、転生者の事は信頼できる人にしか喋っちゃダメだよ」
「うん、分かった!」

 ポチはちゃんと良い事と悪い事の区別は分かるよ。
 だからシスターさんのお約束も守れるよ。
 元気よく手を上げて返事をしたら、シスターさんが微笑みながらポチの頭を撫でてくれたよ。

 ぐー。

 あ、お腹が空いちゃったから、お腹の音が鳴っちゃった。
 ちょっと恥ずかしいなあ。
 思わず下を向いちゃったよ。

「領主様に報告しないといけないが、先ずは朝食にするかのう」
「そうですね。ポチちゃん、みんなと一緒に朝食にしましょうね」
「やったー」

 お腹ペコペコだから、思わずご飯が食べられると聞いて飛び跳ねて喜んじゃった。
 またシスターさんに手を引かれて、建物の中に戻っていきます。
 お爺さんは何かやる事があるから、後から来るんだって。