「お、準備が出来た様じゃな」
「うん。いつでも行ける様に、ポチは準備万端だよ!」

 そして今日は、いよいよ領主様に挨拶をしに行く日なの。
 ポチも、朝から気合十分で準備したよ!
 ポチの髪の毛にちょっと寝癖が残っていたから、シスターさんが寝癖を直してくれたけどね。
 お爺さんも準備万端って感じで、ポチの事を待っていてくれたんだ。

「じゃあ、私達はお手伝いに行ってくるね」
「行ってくる」
「うん。ミッケちゃんとリルムちゃんも気を付けてね!」

 今日はポチお手伝い出来ないから、ミッケちゃんとリルムちゃんを孤児院の玄関で見送るんだ。
 ポチは皆のお手伝いが大好きだから、二人を見送るのが何だかちょっと寂しいな。
 そんな事を思っていたら、なんと孤児院の前に馬車がやってきたの。
 いきなり馬車が来たから、寂しい気持ちがビックリの気持ちで吹きとんじゃった。

「司祭様、お待たせしました」
「いやいや、わざわざご苦労様じゃ。ポチちゃん、今日は馬車に乗るんじゃよ」
「えー! ポチ、馬車に乗るの?」
「そうじゃ。領主様がわざわざ用意してくれたんじゃよ」

 まさかの展開に、ポチびっくりしちゃったよ。
 びっくりしちゃったから、出迎えてくれた人に挨拶をするのを忘れちゃった。

「おはようございます。ポチはポチです。よろしくお願いします」
「ご丁寧にありがとうございます。では、馬車に案内しますね」
「はい!」

 元気良く挨拶をしたら、出迎えてくれた人もにっこりしてくれたよ。
 そのまま、お爺さんと一緒に人生初めての馬車に乗ったよ。
 りっちゃんと一緒に車に乗った事はあったけど、馬車ってなんか新鮮!

「では、出発します」
「わあ、動き出した!」

 出迎えてくれた人が合図をすると、お馬さんがかっぽかっぽって歩き出して馬車が動いたの。
 馬車の窓から見える景色はいつもよりも高いのもあって、何だか違う景色に見えたよ。
 ポチは馬車の窓に張り付いて、ワクワクしながら外の景色を見ていたの。
 
「ほほほ、ポチちゃんは窓から見える景色に釘付けじゃのう」
「うん。何だか、いつもと違う景色に見えるんだよ」
「ほほ、そうかいそうかい」

 お爺さんも、ニコニコしながら窓の外の景色を眺めているポチの事を見ていたよ。
 でも、ポチはそんなにおかしい事を言ったのかな?
 何だか、馬車を引っ張っているお馬さんからもからかわれた様な気がしたよ。

「わあ、おうちが一杯並んでいるね」
「ここは住宅街じゃ。もう少し先に進んだ大きな屋敷が、領主様の屋敷じゃ」
「あ、本当だ。おっきいお屋敷が見えてきたよ!」

 かっぽかっぽって馬車が進んで行くと、段々と遠くに大きなおうちが見えてきたの。
 もうそのおうちの大きさに、ポチびっくりしたんだよ。
 りっちゃんのおうちよりも、孤児院よりも全然大きいの。
 こんな大きなおうちに住んでいるなんて、領主様はやっぱり凄い人なんだって思ったよ。