間違いだらけの告白

 家に帰ると、優夜先輩からメールが届いていることに気付いた。
 何気ない会話。

 私は制服のままごろんと、自宅の二階にある自分の部屋のベッドに横になり、返事を返す。

『今度の休みにデートとかどうですか?』

 そんな言葉から彼との会話が始まった。
 なんで敬語なんだろう。
 思わず画面を見ながら、笑いがこみ上げてくる。

『朝苦手なんで、お昼からでもよければ大丈夫デス』

 私も先輩につられて、慣れない敬語で言葉を返した。
 
『どこか行きたいとこはありますか?』

 ちょっともう、どこまで敬語続くんだろう。
 会って会話している時は敬語じゃないのに。
 ふふふ。なんか、変なのー。

 そう思うのに、どこかこの会話が楽しくて母に呼ばれるまですっかり会話を楽しんでいた。
 どこか行きたいとこはある? 何が好き? 何かしたいことはある?

 もう付き合ってしまっているのに少し変なのかもしれないけど、私たちがお互い何も知らないのだと分かった。

 たぶん普通なら少しは悲観していたのかもしれない。
 だけどどこかそんな関係が、私には楽しかった。

「萌香、ごはんだってば。いい加減降りてきて」
「うん、わかってるー」

 そうは言ったものの、なんだか動けない。
 もう何時間、先輩とメールしていたんだろう。

 いい加減、ご飯だって言わなきゃ。

 そう打ち込もうと思うのに、なんだか名残おしく感じてしまう。
 変な感じ。
 こういうのも好きっていうのかな。

 私はベッドから上体を起こし、自分の胸に手を当てた。

「うー。わかんない」

 だけど先輩からのデートの行き先を見た瞬間、一気に心臓が高鳴るのが自分でも分かった。

「お母さーん、浴衣! 浴衣どこしまったっけ!」

 私はスマホ片手に階段を駆け下りた。