風の温度が下がる。
 今日この日を、どれだけ心待ちにしていたか。

「おはよ。集合場所をここにしたのはセンスあるけど、さすがに寒いよ。早く移動しよう」

「そうだね。……僕たちの出身市町村が違うって気づいたときは焦ったけど、メッセージアプリ、繋いでてよかった」

「僕たちっていうか、わたしと優莉は同じなんだけどね」

「幼馴染だって言ってたよね。僕だけ仲間外れみたいなのやめてよ」

 言いながら、だらだらと喋る。
 その一方で、期待を隠しきれず、心拍数は高い。身体が温まる。

「大丈夫だよ、優莉はそんな人じゃないって知ってるでしょ」

「陽菜のことをそんな人だと思ってるから言った」

「え」

 素で困惑する彼女を見て、可笑しくて笑う。

「さすがに冗談だよね?」

「どうだろ」

「ええ!? せっかく久しぶりに優莉に会えるのに、わたしたちが不仲とかやめてね!?」

「星と星が、再会。……今日は僕たちの七月七日だ」

 感慨深く呟く。

「さすがにそろそろ詩的なこと言うのやめた方がいいと思うよ……? あと、七夕は一年に一回でしょ、全然違うよ。SNSとかも存在しないし」

「例えくらい許してよ」

「そういえば、優莉からなんかメッセージ来てる?」

 陽菜に問われて、確認する。

「集合場所の確認だけ来てるね。様子見る限りだと、ちゃんと来れそうだ」

「優莉が来たら、わたしが真っ先にこの場所を紹介してあげよう。わたしと優吾くんの出会いの地だからね」

 寒いから早く移動したいという気持ちと、僕と陽菜の話を優莉とも共有したい気持ちがせめぎ合っている。
 どっちにするかは、優莉が来てから決めよう。



「……久しぶり。おはよう」