「全部言えなかったよ」

 馬鹿なやつだ。
 これから先は安泰だなんて、そんなわけない。そんなことも気づけないなんて、馬鹿なやつだ。

「本当は誰かに言いたかったこと。やっと言えると思って、ずっと先延ばしにして、"あの人"に言いたかったことも――」

 失った。
 減ってるわけじゃない。増えたものが、ただゼロに戻っただけなのに。

「それなのに、どうしてこんなに苦しいんだろう」

 退屈な日々。そこに現れた、流れ星のような君。
 流れ星は、すぐに消えてしまうのだけれど。

「ははっ……」

 冷笑。星の欠片が心に刺さっているみたいだ。
 心に刺さった欠片がちくちく痛む。痛む心の、傷口に触れる。
 痛いんだ。触れると痛い。
 刺さったものなんてさっさと抜いて、傷が治るようにしてあげた方がいいのはわかってるんだ。

「でも、刺さった星の欠片には、まだ触れないままでいて」