泡沫ユートピア

未来ちゃんと過ごす時間が好き。
未来ちゃんと同じものを持つのが好き。
未来ちゃんと違うものを探して、でも何となく同じだなって感じる時が好き。
生まれてから、家族以外で一番長く一緒にいた人。同じ時間を過ごして、ずっとこれからも続くと思っていた人。
「悠斗、もう寝た?」
静かに寝息の音だけする部屋の、暗闇に話しかけてみる。「起きてる」と小さく返ってきた声は穏やかで。
僕と悠斗は"双子"で同じだから、きっと悠斗も未来ちゃんのことが大好きなんだろう。でも、それは僕も同じで、、、未来ちゃんは僕達の気持ちに気付いているのな?
未来ちゃんは優しいから、僕達をきっと選べない。それを僕も悠斗も分かっているからこそ、気付かないように仲の良い幼馴染を演じているんだ。
貴方はきっと結婚なんて望んでいないだろう。このまま、幼馴染の関係でいれたら良かったのにね。
未来ちゃん。
僕がどれだけ(いびつ)(けが)れていても、君のことが大好きな気持ちは、本当だよ。
だからどうか、嫌わないでほしいな。
僕達の傍にいるせいで嫌がらせを受けて、悩む貴方は、とても―――とても愛らしくて、いじらしい。
でも、昔みたいに一緒に遊んで、ご飯を食べて、映画を見たり、本を読んだり、小さい室内用テントの中でお昼寝をするのも、とっても素敵だよね。
ねぇ、僕達、ずっとずーっと、一緒にいられたら良いね。命が燃え尽きる時も、生まれる時も、生きている時も一緒が良いのに。
まぁ、それが悠斗と未来ちゃんの幸せとは限らないけど。
でもね、未来ちゃん。貴方の幸せを願っているのも本当で。
桜井家に縛られ続けて沢山苦悩してきたことも僕達は知っている。知っているから、、、
また、縛り付けてしまう。
貴方は、自由を知る前に羽を千切られたから、飛び立つことさえ出来ない。足を引きずりながら彷徨(さまよ)うばかりで。
「僕は、我儘(わがまま)だよね」
「、、、」
「未来ちゃんに幸せになってほしいのに、悲しい顔をさせて満足しちゃう僕がいるんだ」
「蓮斗っ、、、」
悠斗が「何を言っているんだ」と言わんばかりに息を呑む。
こんな僕を知ったら、未来ちゃんは僕のことを軽蔑するのかな?
いや、きっと未来ちゃんなら受け入れてくれるよね。
「、、、ごめんね」
僕は、、、少しでも未来ちゃんを疑ってしまった僕を許せないよ。
悠斗から返事がない。
スヤスヤと寝息を立てて眠っている美翔ちゃんを抱き寄せる。
(未来ちゃん。可愛い、天使みたいな子)
ずっとこの先も、綺麗な貴方でいて。僕達に優しく、甘く。たとえこの体が骨になって、塵になって消えてしまったとしても、愛していてほしい。
貴方の脳に色濃く、魂の存在を刻み付けて、そうして僕達は貴方と共に生きていく。